【新刊】すべてを電化せよ! ―科学と実現可能な技術に基づく脱炭素化のアクションプラン

ひさびさに訳書が発売されました。『すべてを電化せよ! ―科学と実現可能な技術に基づく脱炭素化のアクションプラン』です。

著者はSaul Griffith。MITでドクターを取ったオーストラリア系アメリカ人で、「天才補助金」と言われるマッカーサーフェローを取ったシリアルアントレプレナーというピカピカの経歴の…野人です。昨年日本を訪れたときは熊野古道をトレッキングしたりしてます。

https://www.saulgriffith.com/ のトップにある本人のプロフィール写真

この人が地球全体のエネルギーの流れからアメリカ全体のエネルギー利用状況、各州ごとの家庭のエネルギー利用や家計まで分析して導き出した、地球温暖化対策の決定的アクションプラン。それが本書です。

お買い上げよろしくお願いします!!

基本情報
  • 目次
日本語版への序文
はじめに

1章 希望の光
2章 時間は思ったより残されていない
3章 緊急事態は恒久変化のチャンス
4章 我々の知識はどこから来ているのか
5章 2020年代の思考
6章 電化せよ!
7章 電気をどこから調達するか
8章 24/7/365
9章 インフラの再定義
10章 測るには安すぎる
11章 核心は家に
12章 担保借入はタイムマシン
13章 過去への支払い
14章 ルールを書き換えろ!
15章 雇用、雇用、雇用
16章 “ゼロ”次世界大戦への動員
17章 気候変動がすべてではない

付録A なるほど、それなら……
付録B 違いを生むのにあなたができること
付録C もっと詳しく:気候科学入門
付録D もっと詳しく:サンキーフロー図の読み方
付録E もっと詳しく:自分で探そう

謝辞
原注
訳者あとがき
索引
訳者より

われわれは化石燃料の利便性に気付いて以来、あらゆる利用法を開拓し、強く依存し、それを世界の基盤だと思うようになってます。

ところが化石燃料には2つの巨大な欠点があります。

  • 二酸化炭素を排出することによる環境改変
  • エネルギーを熱の形でしか取り出せないことによる熱力学的効率の悪さ

二酸化炭素排出が温暖化を引き起こすことはもはや疑いがありません。地球の現在の平均気温に大した必然性はなく、熱収支が、つまり、太陽から降り注ぐ膨大なエネルギーと赤外線として宇宙に放射されるエネルギーのバランスが少し変わるだけで、気温は簡単に変わってしまいます。赤外線に不透明な気体があれば、それに遮られて宇宙に放射される赤外線が減り、地球に滞留するエネルギーが増えます。この「赤外線に不透明な気体」が温室効果ガスです。

(ここで面白いのは、人類が使用するエネルギーの量は問題ではないこと。地球に降り注ぐ太陽放射は174PW、熱に直すと174PJ/sで、年間では5.5 x 10 ^ 24 (J)*1 となります。これに対して人類が利用する一次エネルギー総量は年間600EJ弱 ≒ 6 x 10 ^ 20 (J) と、4桁ほど小さい。人類が使用するエネルギーの熱は地球系全体からは誤差に過ぎず、排出された温室効果ガスだけが問題になるのです。)

エネルギー効率の悪さは一次エネルギーの必要量にかかってきます。化石燃料の採掘効率がどんどん悪化していることは知られてますが、それは見かけよりもずっと悪く、探査、採掘、運搬に膨大なエネルギーを費やしてます。化石燃料をやめて全面的に電化すれば必要な一次エネルギーは現在の58%引きの42%になるので、ソーラーパネルや風車を使った全面電化は思ったよりも大変ではありません。

本書では

  • ソーラーパネル、風車、EV、バッテリーといった重要物資を傾斜生産による生産効率改善(その効果は予測可能)で安価にする
  • 法整備により許認可コスト、金融コストを低減する
  • これらにより電化移行という全員が得する解を誰もが購入可能にする
  • さらに膨大な生産・据付需要により雇用を増やす
  • 以上の効果を上げつつ地球温暖化が防げる
  • アメリカはこれらのすべてに前例がある

といったことが豊富な資料や図表とともに語られています。

この資料が非常に興味深いです。アメリカのエネルギーの流れは全体でも部門ごとでもフロー図で取り上げられてますし、家計支出、エネルギー支出、節約額なども各州の数字がグラフ化されているので、日本でどうなるかも何となく予測できたりします。

さらにこの本は、机上の空論ではありません。バイデン政権とも近いGriffithが書いた本書が示すのは「アメリカの道」だったりもします。インフレ抑制法(IRA)は電化移行とその必要物資の生産を国内で行うことの宣言であり、ほとんど「全面電化法」です。

日本でも、私が「限界ソーラー発電所」を展開してきたように、技術を持った消費者であれば相当なところまで遊べます。でも政策的なサポートがなければ、重要物資はすべて中国で生産されます。

それじゃあいったい自分は/日本は/人類はどうするべきなの?…ということを考える一助に、本書がなるのは確実です。ぜひちょっと覗いてみてください。

*1:174 x 10 ^ 15 x 60 x 60 x 24 x 365.25

ソーラーパネルの最適傾斜角は直達日照量だけじゃ決まらない

以前にこういう記事を書いた:

kamosawa.hatenablog.com

ソーラーパネルを設置する際の基礎データとして、天候まで加味した年間日照量が最大になる設置角が公開されてるんだからとりあえず使え…という話である。

ところが、地域によく合う最適傾斜角は、実は日射量によってのみ決まるものではなかった。ということが経験を積むうちにわかってきたので書く。

結論から言うと:

  • 都市圏では日射に合わせた角度が最適(デフォルト)
  • 南国ほど水平が最適
  • 北国ほど垂直が最適

である。これは以下のような要因が入ってくるからだ:

  • 季節的な電力需要の変動が大きい場合はそれに合わせたパネル角度が良い
  • マイナス要因をクリアできる角度があればそれも加味するとよい

それぞれ見ていこう。

南国の場合
  • 冷房によりピークを付けるので夏の発電量を最大にしたい(パネルを寝かしたい)
  • 最大のリスク要因は台風である

これの意味するところは、パネルは水平にせよ、である(ちなみに沖縄の6、7月に最大日射量を得られるパネル角度はマイナス(北向き)8度だ)。

  • しかし水平にするとゴミが流れないので最小限の角度をつけたい

ということで、沖縄の家庭向けソーラーの設置角度はそのほとんどが5度となっている。

北国の場合
  • 暖房によりピークを付けるので冬の発電量を最大にしたい(立てたい)
  • 最大の発電阻害要因は積雪である

ということで、垂直設置が合理的となる。これはさらに、以下の要因により強化されている:

  • 雪の反射により下からの散乱入射光が激増する
  • しかも両面発電パネルを使うことで北からの散乱光も使える

つまり、垂直設置が「ものすごく」合理的になる。

北海道の田舎をドライブすると、道沿いに垂直のパネルが延々と続いてる場所が結構あるのはそういうことである。

売電を主な目的にするなら

この場合、積雪がない限り日射量に合わせるべきなので、沖縄でも直達日射量が最大になる23度で設置することに合理性があるとは思う。でもこれ、台風のことを考えると面倒でしょうがない。できれば水平にすることで風圧にsin0を掛け算したい。気候変化がずいぶん進んだので、九州もこれに近い考えになっていくのではないか。

ウチの場合

実は我が限界ソーラー第一発電所のパネル傾斜角は6枚がプラス5度、4枚がマイナス5度である。

このようにしたのは:

  • 空力的に固定できる
  • 夏場の冷房の電気代が極端に大きい
  • 売電しないので自家消費量以上に最適化する必要がない

といったことから。

陸屋根なのでパネルをただ平置きすれば完全に水平になるけど、これはパネル同士の間でケーブルを通すのが厄介だし、なにより汚れがひどいのである。雨が降ったらさーっと流れてくれるのがありがたい。

何でもやってみないとわからないもんだね。

7月21日まで(および22日途中まで)の第一発電所発電量

限界ソーラー発電所の発電量の推移グラフ(大小パネル別)と2023年6月24日の大パネルの発電・需要グラフ

夏至をすぎた。パネルの固定がとりあえずはできて、梅雨も明けつつある。昨日は晴れて、午前中から午後早くまでは沖縄特有の叩きつけるような日差しになった。ここらで現在の状況を示すグラフをアップしておこう。

まずは発電量の推移グラフ。

限界ソーラー発電所の発電量推移

小パネルが赤、大パネルが青の積み上げ棒グラフだ。発電量がめちゃめちゃ増えてるのは大パネルのおかげだけど、小パネルも案外頑張ってるのがよくわかる。

また、発電量が比較的安定してる大パネルに対して天気が悪くなると極端に落ちる小パネル、なんてこともわかる。これはパネルの製造技術の世代差かなと思う。

そして昨2023年6月24日の発電&需要グラフ。

晴れた日の大パネルの発電量(赤)と需要量(緑)

大パネルは昨日みたいに叩きつけるような日差しになると使い切れなくなって発電をサボる。需要+2kWくらいで頭打ちになってグラフの頂上が平坦になってるんだけど、これはバッテリーの充電電流を40Aに制限してるから。そのとき家で消費してる分を除くと、50V x 40A = 2000W(2kW)までしか発電できない。また、この電力量上乗せ分(赤領域が緑より高い部分)の積分値にも限界があり、バッテリーの充電可能容量である7kWhくらいで止まる。昨日は午後3時すぎに曇ったため、おおむねちょうど充電完了したようなグラフになったが、日没まで晴れてても同じような形のグラフになったものと思われる。

これを日照量に比例したキレイな山形にするには、バッテリーを足して受け入れ電力(アンペア数)も充電可能容量(kWh値)も増やす必要がある。まだバッテリー足りもうさん(西郷さん)。

緑の需要曲線は傾向として昼間に下がる。これはウチの昼の電力需要が小さくなるからではなく、小パネルがグリッドタイインバータで接続されているから。

グリッドタイインバータはコンセントに接続し、そのとき家で使ってる電気を打ち消すように働く。つまり小パネルが発電した分だけ需要が下がって見える。本来、昼間はエアコンが太陽熱を打ち消そうと頑張るので需要はむしろ高まってるが、見かけは下がる。

12時、13時、14時あたり、雲がかかったタイミングで赤の大パネルの発電電力が下がるとともに、需要がスパイクしてるように見えるのがわかると思う。これは需要が増えてるのではなく、小パネルの発電量が落ちることで削られていた真の需要があらわになっているということ。

小パネルは常に全力、大パネルが調整を担ってる状態で、ちょっとおもしろい。

ボトルネックは完全にバッテリーなので、もうちょい増強したい…と思ったら1ドル143.7円…。

https://finance.yahoo.co.jp/quote/USDJPY=FX より

勘弁してくれ〜。

ウチの電力需要は450kWh/月ではなかった

ここ数ヶ月はソーラーパネルだけでなく電力量計付きスマートプラグやHEMSで遊んでいたのだが、1日の電力消費量はエアコン無しで450kWh/月程度で概ね安定していた。なので元々そんなもんだったような気になっていた。

ところが先ほど電力会社のサイトで昨年2月から今年1月までのグラフを見たら、こんな感じだった。

どこが450kWhやねん…。これを見ると平均600kWhくらいかな。3〜5月の暖房も冷房も必要のない時期は450に近いので、誤解するのももっともではあるのだが。

とはいえ、いろいろな器具で計測して遊ぶこと自体が「測るだけダイエット」のような効果を生んで、知らん間に節電生活してたのかなとも思う。もっと「湯水のように電気が使い放題」でないとアカンよね。パネルも電池も買い足すべきである。

料金はこの期間の1年間で262529円だった。完全オフグリッドを達成すれば、今の設備投資80万円は4年かからず元が取れることになる。

オール電化オフグリッドでエネルギー無料の生活を実現!

…したわけではないんだけど、発電して遊んでたら、そういう未来がちらっと見えたので書いておく。

ソーラーパネルの電気の活用のため、マイクログリッドタイインバータとオフグリッドインバータを併用している。グリッドタイインバータは既存のAC出力に電力を重畳させるインバータ、オフグリッドインバータは自前で発振してAC出力を作るインバータである。

違いはこれだけではない。グリッドタイインバータは既存の100Vコンセントに接続して電気を流し込む機械であり、電気が余っても出力調整などせず、いつでも全開(だから逆潮流防止にスイッチ等が必要になる)。これに対し、オフグリッドインバータは負荷の分しか発電しない。

それを実感させられたのが今日の経験だ。大きなソーラーパネルの付いたオフグリッドインバータに接続された電子レンジとトースターを同時に使ったタイミングで、バッテリーへの充電が起きたところ、ソーラーパネルが今まで見たこともない3.27kWという出力を叩き出したのだ。

これまで1.2kWも出れば「すごい!」と思っていたのだが、どうやら三味線を弾かれていたようだ。インバータにWiFi接続することで表示されるグラフを見ても、発電量(赤)は朝のバッテリー充電が終わったあとは需要(緑)に合わせてしか発電できないのがよく判る。

この強烈な発電能力を活かすには、というか捨てないためには、電気をどんどん使って別の形のエネルギーに、あるいはもっと一般性高く、「別の価値」に変換する必要がある。

それで自分はトースターで調理したりコーヒーを焙煎したり右往左往した挙げ句、電子レンジでお湯を沸かすまでやった。まあ要するに、出力の凄さを目の辺りにして落ち着きがなくなっていた。

でも、浮かれるのも無理はないと思う。「エネルギーがタダ」という状態はすごく楽しい。アメリカの初期の原発推進派は "Too cheap to meter(測るには安すぎる)" と言っていたらしいが、このはしゃいだ言い方の感覚がよく分かる。湯水のように使っても使っても使い切れない。

現在ウチのシステムは仮設状態で商用電力も使っているため、この「使い切れない!」は擬似的だが、おそらく本接続後も完全には使い切れない。電気自動車などの追加を見込んだ容量になっているからだ。

この多すぎるほどの発電・蓄電容量に対して機器コストは非常に安い。これまでの電力使用量を考えると、投資の回収期間は理論的には3年程度。実際にやったさまざまな非効率を勘案しても、おそらく5年と思われる。利回りなんと20%である(単利)。

しかもソーラーパネルやバッテリーは今後も急速に安くなっていく。90年代にPC自作趣味があった人は、雑誌広告を見てメモリやハードディスクの価格低下にワクワクする日常というのを覚えていると思うが、パネルやバッテリーにはこれに近い価格低下が起きているのだ。これはOur World in Dataにあったソーラーパネル価格のグラフ

リチウムイオンバッテリー価格は2022年に史上初めて上昇したが、これはリチウム価格の一時的なスパイクによるもので、現在は収まっている。そしてLiFePO4電池、さらにはナトリウム電池と、容量あたり、1充放電あたりの価格(サイクルコスト)がめちゃめちゃに安い電池が次々に出て、実質コストはどんどん下がっている。ナトリウム電池などは材料の縛りがまったくないので、あとは学習率(生産経験と規模の拡大による効率向上)だけで驚くほど安くなるはず。

今ですら「お得な投資」なのが、さらに安価になる。そうなれば、これまでのFITなんか問題にならないほど流行るだろう。もともとFITというのは産業の立ち上がりを助けるための仕組みであり、本番はこれからなのだ。機器コストが安くなれば工事費が多くかかっても回収できるため、これまで横目で見ていた人もパネルを欲しがる。東京などは補助金も厚い。逆に化石燃料主体の既存電力会社の電気料金は上がっていく。やらなきゃ損である。

そして同じ工事をするなら、みんな太陽電池を載せられるだけ載せるだろう。するとどうなるか。昼間の電気が猛烈に余るようになる。現在でも土日昼間のJPEXスポット価格は0円に近い。これが常態化するわけだ。

こうなると、余ってる電気を多少効率が悪くても別の価値に変えられる者が得をする。バッテリーに溜めておいて価格の高いときに放出してもいいし、水素に替えて合成燃料にしてもいい。

家庭レベルではヒートポンプ給湯(エコキュート)も蓄電用バッテリーも使うようになるだろう。EVにも充電したい。(なにしろバッテリーが安くなるのだから、EVの普及もあっという間だろう。電池技術に関していまや世界一は中国であり、その先端を行くBYDのシーガルは1充電で400キロ走れて140万円だ。)

電気が十分に溜められるようになれば、みんな思うだろう。「こんなに電気が余ってるなら、もう電力会社の電線が繋がってる必要ってないんじゃないの?」と。*1

かくして、「オール電化&オフグリッドで電気代もガス代もガソリン代も要らない生活!」というのが将来の「あたりまえ」になる。

…これが今日オレが見てきた未来です。田園地帯から普及し、都会も次第にソーラーパネルに覆われていくはず。

ランニングコストとして定常的に出ていくお金が減り、比較的軽い資本性の負担だけになることで、運営(生活)は楽になる。エネルギーは余ってて使い放題。ユートピアではないですか。

むかしむかしの2015年に深圳のMaker Faireに行ったとき、同じ宿に泊った野尻抱介さんと「社会問題のほとんどはエネルギー問題であり、エネルギーが無料ならだいたい解決する」という話で盛り上がったことがあるが(野尻さんのまとめ)、個人レベルでは10年経たずに実現したなあ…と思うと感慨深い。

*1:もちろん、いま急いで既設の電線まで切る必要はない。LOOOPでんきのような基本料金ゼロ円の電力会社と契約し、確実なバックアップとして確保しておけばいいのだ。とはいえ伝統的な巨大電力会社から電気を買う人は非常に少なくなるだろう。

限界ソーラー発電所、現在の機器構成

現在のウチの屋上仮設発電所の機器構成を記録しておく。どんどん変わっていくのでスナップショットだ。

いまウチでは5.1kWのソーラーパネルと5kWhのLiFePO4バッテリーで運用している。これがどのくらいの電力に相当するかというと、普通のご家庭の電気需要(450kWh/月くらい=1日15kWh)に対し、晴れると20kWhほど発電するパネルの方はすこし余る程度(天気が悪い日があると足りない)。バッテリーの方は1日の需要の1/3程度(しかも全容量使ってはならない)なので、オフグリッドにはまるで足らず、ピークシフトには使えるという量である。ウチは普通のご家庭ではないが、電力需要はちょうどこのくらいなので、この数字で考えてほしい。

仮設状態なので、まだ商用電力をたくさん使っている。昼間は4.5kWのパネルが台所とエアコンを支え、600Wのパネルがその他の負荷を削る。台所の分はほぼ完全にオフグリッド状態で、天気に関わらず商用電力を使っていない。ただしエアコンを点け続ければ、夜中にバッテリーが切れて商用電力だけになる。その他の負荷は400W程度でほとんど定常状態。晴れると600Wのパネルが全部の負荷を支えるようになり、逆潮流防止プログラムが働くこともしばしばある。ただし、夜はもちろん発電せず、曇や雨でも100W以下の発電量になるので、ほぼほぼ商用電力で暮らす感じになる。

1日の商用電力の使用量は、発電を始める前に15kWh程度だったのが10kWh程度になった。1日5kWh程度を発電で賄っている。5.1kWのパネルの発電量としては非常に小さいが、これはまだ配線が途中で4.5kWのパネルがほとんど力を発揮していないためだ。

いま実現してること

  • 合計5.1kWのパネルを屋上仮設
  • うち600W分にグリッドタイインバータを取り付けコンセントに給電
  • 4.5kW分を仮設ハイブリッドインバータに接続
  • ハイブリッドインバータは既設分電盤のブレーカーに仮接続
  • 5kWhのバッテリーを、このハイブリッドインバータに仮接続

概念図

まだまだ動かしてみただけということ。

かかった費用

現時点で80万円くらい。闇雲にやって結構な無駄を出してるので、もう一度やるなら10万は圧縮できると思う。

内訳は:

  • パネル45万(30万+15万)
  • インバータ16万(9万+3万+2万)
  • バッテリー13.2万
  • 接続箱1.8万
  • 配線2万
  • その他ちょこちょこ

本設置にはあと:

  • 分電盤2万
  • 配線材2万
  • 架台3万くらい?

かかる予定。電気工事士資格持ちなので工事費はタダ。溶接もできるので架台は材料費のみ。

現在の接続

  • ハイブリッドインバータに接続した負荷: 冷蔵庫 + 台所照明 + 大きめの変動負荷(レンジ等の台所壁コンセント接続機器とエアコン)
  • ハイブリッドインバータ未接続の主な負荷: 照明、サーバー3台、普通のパソコン2台、洗濯機、3Dプリンタ3台
  • グリッドタイインバータ: 廊下のコンセントに接続してハイブリッドインバータ未接続の負荷を補助

使用機材

そこそこ安く買えてるけど、掴まされた!というのもある。

パネル

Solar-Panel Store (AliExpress) Solar Panel Kit Complete with Aluminum Frame

1枚1.5万x10枚。

www.aliexpress.com

掴まされたやつ。オススメしません。

150Wパネルx10で1140.83ドルだったので「1kWあたり750ドルくらいじゃん。安い!」と、12万か13万くらいの気分で注文したら、153040円。1kWあたり10万円切れず。

しかも発電量を数ヶ月計測したところ、「100Wパネルの少し良いやつ」程度しか発電しない。100Wが10枚で153040円では、1kWあたり153040円である。いつの価格だ。しかも1枚燃えた(連絡したら代品を送ってくれたのは良かったが)。

10枚購入したが、稼働してるのは6枚だけ。2枚はインバータ故障でどこにも繋がっておらず、2枚は設置すらしていない。上で「600Wのパネル」と書いているのは、これの6枚分のこと。

アキシテック AC-450MH/144S

1枚3万ちょいx10枚。

www.solar-off.com

こちらが本命。450Wで24750円という激安パネル。しかもドイツメーカー・・・の、中国工場生産品。

購入したソーラーオフというお店(横浜)はメチャメチャ安く、Aliexpressと違ってデータシートの存在するちゃんとした製品を売ってる(ソーラーパネルにデータシートが存在してることにショックを受けた)。経営者はメディア露出もしているシリアルアントレプレナー。先に見つけてたら普通にこっちで全部買った。

このパネル、デカくて安くていいんだけど、Voc(開放電圧)が50.1Vと絶妙に50Vを超えてしまってるのが大きな欠点。なぜこれが欠点になるかというと、インバータの接続可能パネルの制限はだいたい50V刻みなので、250Vまでのインバータなら5枚接続…できそうだけどできなくて4枚、500Vなら10枚接続…も、できそうでできなくて9枚、ということになるから。

実際には接続箱等でダイオードが入ることでギリギリ制限以下に落とすことができるが、中国製のインバータ(というか電子機器全般)を使う場合、定格仕様は「ここまでは確実に耐える」ではなく「ここまで耐えたら嬉しい」くらいの目安と考え、無理をしない方がいい。

このパネルを買ったのは、ソーラーオフの沖縄送料が「1個5500円均一・個数値引きなし」だから。大きさ重さに関係なく5500円取られるのだ。

パネル1枚あたり一律5500円高くなるので、たとえば450Wで24750円のパネル(買ったやつ)と、その半分で225Wで1万円しかしないパネルがあったとしても、1万円パネルは15500円になってしまうので450Wあたりの価格は31000円。買ったパネルの30250円の方が安くなる。

そんなわけで、合計ワット数が同じなら、なるべくワット数の大きいパネルを少数買ったほうがお得。そして500Wを超えるパネルは最低購入数が20枚とか、どうかすると50枚に設定されているため、10枚から買えるこのパネルにした。

ちなみに、いまなら最近発売されたリープトンエナジーLP182*182-M-60-MH-460Wというのがあるので、こちらを選ぶだろう。27500円と3000円弱高いが、Vocが41.80Vと非常に使い勝手がよく、しかも1枚単位で買える。

インバータ

SRNE HF4850U-80H

8万円くらい + 消費税8000円くらいの合計9万。

ハイブリッドインバータは日本でもよく使われてるこの機種。5kW出力、ソーラーパネルもVoc 500Vまで接続できる大容量対応で、バッテリーは48Vを使用する。

Aliexpressで買ったらAmazonより2万くらい安かったけど、税関で消費税を取られた。円安で値上がりしており、消費税を取られるならAmazonと同じくらいになる。Amazonがオススメ。

GMI-300

5台で3万円くらい。後で1万戻ってきた

グリッドタイマイクロインバータ。オススメしません。

Aliで買うと1台50ドル以下でお安いのだけど、とにかく壊れるし不安定。5台買ったけど、いまちゃんと動いてるのは2台だけ。1台はときどき止まるのをソフトウェア的に解決してる。壊れた2台のうち1台はよくある感じに? マザーボード死亡。FET等の交換では直らず。もう1台は防水のはずが浸水して死亡。

WVC-1600

2万円くらい

https://www.aliexpress.com/item/1005004312592200.htmlwww.aliexpress.com

1.6kW対応のグリッドタイマイクロインバータ。GMI-300を置き換える予定。

買ってから検索したら、わざわざドメインを取って注意喚起してる人がいるほど評判の悪いメーカーだった。モノはGMI-300のような見るからに安物というわけでもなく(筐体も基板も非常にしっかりしてる)、注意喚起サイトの情報のやり取りを見ていると、十分な冷却をして定格の半分くらいで使えば大丈夫そう。ただしヒートシンクを作る計画が進んでおらず放置中。

バッテリー

Wullils 24V 100A

2個で13万2千円くらい

https://www.aliexpress.com/item/1005004634816824.htmlwww.aliexpress.com

たいへんお安いLeFePO4バッテリー。

フグリッド用の蓄電には充電1回あたりの費用が最安のLiFePO4バッテリーが最適で、ここ数年はかなり安くなっている。国内でめちゃめちゃ評判のいいLi Time(Ampare Timeのブランド名変更)の12V100Ah24V100Ahを見ても5kWhあたり10万前後で買える。

しかしそこで下値を探りに行ってしまうのがオレの浅はかなところ。それで見つけたのが、Aliでよく宣伝してるWullilsだった。

自分が買ったときは24V100Ahのものが456ドル。買ってからメッセージで「沖縄は島なので送料が必要」といってきたので交渉し、24V100Ahを2個と送料50ドルで950ドルにしてもらった。13万ちょっとなのでLi Timeの2/3。やった!!

ところが、である。届いたバッテリーを接続してフル充電し、さらにフル放電して容量試験したところ、容量は100Ahより多いくらいだったのだが、どうしたことか、もう充電ができない。

サポートとのやり取りは遅々として進まず、「開けて調べてみてくれ」と言われたので、ごっついケースを開けて(スクレーパーの刃が折れた。スクレーパーって折れるんだな、と思った)、「BMSありと無しの電圧」なんかも調べて写真を送ったりしたが、「正常だ、普通なら使えるはず」と言われるのみ。

しかも、開けて初めてわかったのだが、このバッテリーには一般的な青い四角のセルではなく、電気自動車用によく使われている薄いシート状のセル(prismatic cell プリズムセルというらしい)が入っていた。LiFePO4バッテリー製品を購入してレビューして筐体を開けてみるまでする動画というのもアメリカのYouTuberがいろいろ出しており、よく視聴するが、こんなのは初めて見た。

プリズムセルだから悪いということもないのだが、一般的に使われないのは理由があるだろう。おそらく自動車用のB品を安く仕入れ、大量の宣伝でガンガン売る業者だった、ということではないか。Aliexpressは業者の独創性を楽しむところである、とポジティブに捉えれば最高の体験だが、まともに使えないバッテリーを売りつけられたのは悔しいところだ。

サポート任せにせずに自分でよくよく調べてみたところ、BMSの入出力が逆に接続されているという製造不良である。正常に接続しても動作しなかったので(充電はできるが放電はできない)、単体で販売されている他のBMSを注文した。現在直結により動作してるので、電池屋には一部返金を迫りたいところである。

そんなわけで、この業者のバッテリーは大容量で安いではあるものの決してオススメしない。Aliにはさらに安くてそこそこ評判のいい店も存在するが、この店も納期がサイトに書いてあるのと違って極端に遅かった。販売ページには2週間後の日付が書いてあるのに、購入後の自動メッセージが「船便だから2〜3ヶ月かかる。待てるか? 待てないならキャンセルしろ」である。ページの納期は最初からウソだ。完全に開き直っていて、いっそ清々しい。

結論としては、高いものを買うなら日本人が満足する品質レベルを確保してるか、返品が無条件にできるところがよい。LiFePO4バッテリーに関しては、国内に倉庫があって納期が爆速でサポートが良いと「日本人に」評判のLi Timeがすごく良いと思う。いまはセールで24Vバッテリーの84149円なので2個で16万8300円。Wullilsとの差額は半分か…はー、こっちを買うべきだった…。

接続箱

ソーラーフロンティア KTN-CBD

2万円弱。

接続箱はソーラーパネルのケーブルをインバータ(日本風に言えばパワコン)に接続する前の段階でまとめるための分電盤的なものだ。ストリング(ソーラーパネルの直列になった1系統)ごとにオン・オフするためのブレーカーや、逆流防止ダイオードが付いている。

ウチはハイブリッドインバータ(オフグリッドインバータ)に接続するストリングが1系統だけで、小さいパネルはグリッドタイインバータで直接ACに流している。接続箱は特に必要ない構成といえばそうなのだが、大きなパネル多数に高価なインバータがぶら下がった機器である。雷が怖い。ソーラー向けの避雷器の適当な製品が経験が浅くて判別できなかったため、避雷器の付いた接続箱を購入した。商品はこれの4回路バージョン。

www.solar-off.com

4回路も要らないけど。

価格は本体13200円+送料5500円(沖縄送料1個5500円均一!)の18700円。ほぼ2万。

まとめ

はやいとこ本配線をしなさい…じゃなくて。

ソーラー&バッテリーの価格低下は著しく、その成果は個人でも買える。土地のある人、屋上のある人は試すといいと思うよ!

寺のように朝の掃除をして暮らしてる今日このごろですが

今日は長時間お片付けのチャンネルを見てしまった。


www.youtube.com


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自分では「子供の頃からエースで4番」級の汚部屋製造野郎だと思ってたけど、こういうのに出てくる全日本級の人たちに比べると、ぜんぜん大したことない。もっと精進せねば…じゃなくて。

思ったのは、捨てるのが面倒で積み上がってるだけの廃棄物も、自分だけが思い入れを持っている古いものも、客観的に見ればそこそこ価値があるだろうものでさえ、他人から見れば等しくゴミなんだなあ…ということである。

記憶にはポータビリティがない。脳は直接接続できず、記憶を伝える手段は言葉や絵や写真といった限定的な媒体しかなく、そのバンド幅は極めて狭い。モノにまつわる記憶は現状維持すらできず単調減少するのみで、言ってみれば死んだ人に関する記憶の総量とまったく同じだ。

小学生のときに乗った船で作ったメダルのキーホルダーを見て、船酔いで食事できず何度も買ってもらったピノの味や、大浴場のお湯の傾き、ディスコで流れてた曲、そうした背景から浮び上がる父との精神的交流…といったものを想起できる人間は自分以外にいない。そんなキーホルダーが入ってる平たい缶のガラクタ箱を見れば、他人は「なんかジャラジャラしたゴミ」と思うだろう。

数千冊の蔵書の一冊一冊にオレが抱いているちょっとした思いを注釈として残すことすら不可能で、我が家の図書室は「なんかいろんなジャンルが混ざってて参考にならなそうな本棚が並んだ部屋」でしかない。

もちろん、他人にとっての価値とかどうでもよいし、自分に大事なものを自分だけで愛でていればよく、自分が死んだあとは何がどうなろうと自分には関わりのねえことでやんす。というのはその通りだ。でも、こうした大量の思いが生まれ、また消えていっているという事実を思うと、なかなかに強烈な無常を覚える。

人間は無から出て無に帰る。後には何も残らない。