フォルクスポタ電

バッテリーとインバータと充電器をバラで買ってきて組む「なんちゃってポータブル電源」を作ることを考えよう。それも日本人が普通に買える値段で、不良品はちゃんと交換してもらえる「常識的な日本語サポート」の付いた「国民自動車フォルクスワーゲン」ならぬ「国民蓄電池ナショナル乾電池」だ。

なぜそんな話をするか。台風6号で蓄電システムやポータブル電源に注目が集まってるのに、十分な性能のものが廉価に売られてないからだ。

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沖縄最大のホームセンターチェーン、メイクマンの全店で、ポータブル電源の全在庫が売り切れたらしい。

 ホームセンターを展開するメイクマンの浦添本店では、持ち運びが可能な大容量のポータブル電源が2日間で5個全て売れた。ポータブル電源は手のひらサイズのモバイルバッテリーより大きく、重さは数キロ程度が多い。冷蔵庫が約20時間稼働できる14万円台や、スマートフォンが30回フル充電できる数万円台など、4種類を販売していた。

 従来は年1~2台売れる程度だが、本島地方で暴風警報が解除された3日から売れ始め、4日にはメイクマン全店舗で在庫切れに。担当者は「台風の影響が長引く中、これまでにない売れ行きになった」と驚く。

このポータブル電源は冷蔵庫が20時間というから1.5kWh程度だろうか。地方ホームセンターとしては頑張ってるお値段だ。しかしいかんせん容量が小さい。

災害時には冷蔵庫だけでも数日は持たせたいという需要が強烈にある。明かりより冷蔵庫のほうが代替が効かないし、マトモなメシさえあれば他が多少落ちても頑張れる。命にかかわる冷蔵薬を抱えてる方も少なくない。

今回の台風で言えば、20時間では那覇の一部しかカバーできない。沖電の停電地図を定期的にモニターしていたところ、停電率33%を超える状態が24時間以上続いた。おそらく2割前後という多くの世帯が48時間以上の停電を経験したし、うるま市の一部は1日の夕方から7日の朝まで1週間近く停電のままだった。

冷蔵庫はだいたい1日に2kWhくらい食うので、市販のポタ電だと最強クラスの2kWhや3kWhでも役者不足。5kWhくらいは欲しい。

市販品は価格も高い。ポタ電の相場は格安品でも1kWhあたり10万円程度で、これは実はニチコン等が販売する家庭用蓄電池システムよりずっと安くなっているという驚きはあるのだが(参考: Yahooショッピング)、オールインワンできちんと製品にまとめてあること自体がコスト高を呼ぶ。

半額でできるやろ、と思うんだよね。

いまのオレなら投資回収も考えて、3.2VセルとBMSをバラで買ってきて効率最大の48Vシステムを組む。中華一流メーカーのセルは価格容量比の一番良い製品が300Ah付近に移っているので容量は15kWh。インバータもソーラーパネルをサポートしたハイブリッドインバータしか無いぜーとか思う。これなら容量単価は半額どころではない。ただしいろんなハードルがあるし、この用途にはオーバーキル。なので、

  • 電気工事士資格不要
  • サポートは日本語でマトモなのが必要

という条件で、どれだけ安価なものが作れるかを考えよう。

まずバッテリーは信頼の(中国製)Li Timeを使いたい。国民ポタ電と言いつついきなり中国製だが、価格的には絶対に中国製。ただし最安は狙わない。 ここを使うのはネットを見る限りサポートの評判が最高だからで、安価なバッテリーをAliexpressで買うときの罠に次々全部ハマったオレとしては、中身の見えないパッケージ品のバッテリーは少しでも信用できる業者から買うべきだと考える。Li Timeは日本支社のある世界企業であり、中華価格のバッテリーを売ってる業者としては最高グレード。

インバータも信頼の(中国製)リョクエン。ここはLi Timeのように絶大な評価があるわけではないが、相模原に定着して非常に頑張ってるし、Amazonでの展開が手広くて妥当なものを売ってる印象がある。まあバッテリーとは違い、超高信頼を狙うなら日本製を使う余地がある部分。普通の信頼性なら中国製の激安にちゃんとしたサポートが付いたやつが良いと考える。

システム電圧は24Vにする。12Vシステムより効率が高く、ケーブルが細く済むため。それなら48Vシステムにしたいところだが、30Vを超えると電気工事士資格が必要になる。なので24Vである。

そしてバッテリー電圧そのものも12Vの2直列ではなく24Vの製品を選び、容量も1個で200Aのデカいやつにする。これは1台のBMSで全部のセルを管理してほしいから。ポピュラーな12V 100Ahのバッテリーを4個買い、2並2直で組んだほうが一見安い。でもこれ、セルの電圧管理がバラバラになるのが最悪なんだよね。数ヶ月に一度は超面倒なリバランスが必要になると思う。まとめてあるほうが絶対にランニングコストが安い。

インバータはなんでもいい。必要な容量に合わせて選ぶ。注意点は、冷蔵庫やエアコンといったモーターが入ってる機器(誘導負荷)を使う場合に機器本体か取説に書いてある「電動機定格消費電力」の10倍以上の容量を確保することくらい。ここでは大型冷蔵庫が十分動かせるものを選んでおく。

買い物リスト

というわけで、オレの現状のオススメはこうである:

届いたら組み立てる前に置き場所を考えたほうがいいかもしれない。24V 200Ahのバッテリーは重さが40kg近くあるからだ。

作り方は超簡単。

  1. インバータの付属ケーブルをバッテリーの端子にネジ止めする

…これでもう完成だ。ステップ2はない。バッテリー1個なので付属のケーブルだけで完結するし、電圧バランスを取る必要もない。ただ繋ぐだけ。接続したらバラけないようにガムテか何かで固定したほうがいいだろう。

たったこれだけで、5kWh容量でエアコン…は怪しくても冷蔵庫が3日持つシステムが25万以下で組める。

定格寿命は4000回以上なので、毎日使って20年くらい。定格寿命とはその回数のフル充放電後に70%の容量になる充放電回数なので、サイクルコスト(1kWhを1回充放電するコスト)は12.5円以下ということになる。*1

5kWhじゃ3日しか持たない! 1週間くらい持たせたい! というならバッテリーだけ2個か3個に増やして並列接続するとよい。Li Timeには容量400Ahとかのバッテリーがないので(24V 400Ahって重すぎて持てないと思う)、ここは並列接続になる。まあ直列と違ってBMSが別になってる問題はそうそう出ない。追加のケーブルが必要になり、さらに重くなるのが問題というところか。

これでもグローバルスタンダードよりはそこそこ高い。バラのセルを買ってくれば、15kWhのシステムが60万ではなく40万で組める。国際配送の安い内地なら30万かも。

でもこの範囲で組むことで、日本人の考える「ちゃんとしたの」がそこそこのお値段で買える。そういうものとしては、ここらがたぶん最安と思う。

見果てぬ国産品

まあ、一番いいのはドイツのフォルクスワーゲンの当初の計画のように(あれは実際には軍備に費やされてしまったが)、国が激安の国策ポタ電を企画してくれることだと思う。半分の世帯に普及させるなら、15kWh30万円どころか15万円で行けるかも。消防法を改正して30kWh30万円の方がいいかな。

数を考えれば、このくらい安くてもメーカーはうるおい、雇用が増える。系統安定は桁違いに楽になり、火力発電は不要になる。災害時の電源確保もできて、いろいろな意味で国民の安全が増進する。

アメリカのインフレ低減法が国産電池を徹底的に優遇するのは、こういう効果を狙ってのことである。ここらのことは新刊『すべてを電化せよ!』に詳しく書いてあるので読んでね!!

*1:このくらいになると、ソーラーパネルを接続して元を取ることを考えたくなるが、その場合はチャージャーを買うよりハイブリッドインバータを買うほうが便利である。