スペインのベーシックインカム

2020/04/09 update
すいません、これFacebookにだーっと書いたのを「ブログにも載せとくかー」、と下書きにコピペして、直しながらちゃんと調べていったところ、制度的にあまり期待できないものだったことが判ってきたので、ブログへの投稿自体をやめて破棄したつもりだったのが、今日見たら投稿されてた…という記事です。

Facebookの方には「いまいちでした」的なコメントを付けておいたんだけど、こちらの方は自分でも投稿してあったことを知らなかったので、ぱっと見で書いた印象に近いものになってます。

1日置いてあったものを消すのもいさぎよくないというか、読んだ人が戻ってきたら意味不明すぎなのでアップデートしておくことにします。

いまの認識は「いまいちっぽいけど希望は持ってる」といったところです。

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この報道通りの制度を導入した場合に、ベーシックインカム的文脈で一番問題になる点は、家族の状況で変える("mostly aimed at families, but differentiating between their circumstances.")というところです。

これをやると、申請や給付は単純ではなくなり、また勤労意欲への逆インセンティブが生じることになる。日本の生活保護制度と大差ないです。生活保護のない国が生活保護制度を導入するだけでは? という感じ。恒久化する意味もありそうだし。

 

とはいえ、マトモなベーシックインカムになる可能性もあります。

  1. スペインに既にまともな生活保護制度が存在し、これに「加えて」所得補償制度を付ける場合
  2. Business Insider誌の記事に誤訳がある場合

2.は「家族の状況で変える」という記述が間違いだった場合です。

テレビインタビューを扱ったスペイン語の記事の方を見ると、大臣の談話として "mucho en las familias, pero diferenciando las circunstancias" とある。これをGoogle Translateで英語にすると"a lot in families, but differentiating circumstances"で記事のようなニュアンスになります。ところが、後置修飾を多用するラテン語系の言語だと、but以下は単にfamiliesがいろんな状況に置かれてるという意味にも取れるように思うんですね。オレはスペイン語はわからないんですが、同じラテン系のフランス語は少しだけわかります。その感覚だと、後者でもおかしくない感じがします。そもそも談話だし。

まあ、いずれにしても続報待ちですね。

「ヨーロッパはエリートが国を動かし、日本は現場が動かす」

という感触は、よくも悪くも変わらないです。


以下は元々のポスト:


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"We're going to do it as soon as possible. So it can be useful, not just for this extraordinary situation, and that it remains forever," the minister of economic affairs said. ()

わかってらっしゃりすぎで逆にツラい気分になる。

スペインでベーシックインカム導入、しかも恒久的というニュースは昨日か一昨日にちらっと見てたんだけど、「また限定的な話が針小棒大に伝わってるんでしょ」と眉に唾をつける気分、および、期待はずれだったときの虚無感がイヤで読むのを先延ばしにしてた。これな。

www.businessinsider.com

だけど読んでみたら、まあまあマトモなベーシックインカムだ。

  • 自立を助ける数々の施策の一つとして現金給付を準備中
  • 可能な限り早くやる
  • 常に役立つものなので恒久化する

ですと。これならベーシックインカムのメリット:

  • 収入予測に作用して不幸を減らす
  • 給付にまつわる分断を防ぐ
  • 個々人の選択を通した需要の下支え(市場を歪めない補助金)となる
  • 勤労意欲を下げない

といったあたりは享受できそう。また副次的なメリットである:

  • 新産業への移行を妨害しない
  • カネにならない重要な仕事を市場から排除しない

あたりについても心配ない。

とはいえ危なげに見える点もあって:

  • スペインのminister of economic affairsのNadia Calvinoがテレビのインタビューで語ったもの Nadia Calviño: "Vamos a implementar lo antes posible el ingreso mínimo vital"
  • できるだけ早くとあるが導入日はまだ決まってない  < ヤバくない?
  • familyを狙っているがそれぞれの状況で区別      < かなりヤバくない?ほんとにBI?
  • 所得制限つきでuniversalなベーシックインカムではない(弱者救済を早くやることに主眼をおいてて税制をいじってない)

といったあたりは気になるし要注目。実現できなかったり、違った制度になる可能性は、残念ながらまだまだある。minister of economic affairsというけど、それって経産省的な役所では? この人に予算権限あるの? なんてのは日本人としては着目せざるを得ないよね。そもそもニュースのタイトルからして Spain is "moving to" だ。

個人的には、ホントにベーシックインカムらしいベーシックインカムになるか、という点が気になるんだけど、まあこれは、実質的にベーシックインカムとして働くなら名目的な条件が満たされてなくても「スペイン版実装のベーシックインカム」でいいような気もする。

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それにしても、やはりというかなんというか、

「ヨーロッパはエリートが国を動かし、日本は現場が動かす」

んだなー、と。

日本のスタイルは局所最適を達成するには適してるけど、全体最適は見えないようになってる感じがするよね。