沖縄県で救急車待ちが出ない背景は中部病院ERのQ&Aに書いてあった

沖縄はここ2ヶ月ほど、COVID-19の新規感染者が全国一位だ。

f:id:kamosawa:20210811081127p:plain

都道府県別】人口あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移 (https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/japan.html?y=0 より)

ところが、このコロナ爆発下でも、内地のような「救急車10時間」みたいな話をぜんぜん聞かない。

これは、県が一元管理してる空き病床の把握システムがあるのが大きい。どこに行けばいいのか救急隊員が経験と実績で判断とかしなくてもいいので、入院調整がすぐに済む。20分も待つとニュースになるくらい。

むしろ他の都道府県に無いのはなんでだぜ?? と思ってたんだけど、その背景が県立中部病院ERのページのQ&Aで軽く触れられていた。

どうやらこれ、米国統治時代の遺産らしいんだよね。該当箇所をご紹介:

Q: 内地の救急と沖縄の救急はどこがちがっているのでしょうか。

A: 日本の救急医療システムは一次救急、二次救急、三次救急と、患者さんの重症度に応じて、病院が指定されています。 内地ではこの分類に従って、患者さん自身または救急隊が重症度を判断して、受診する病院を決めることになります。

沖縄県では県立病院群が中心となって救急医療を担ってきました。 沖縄県ではアメリカの医療体制を元にしていたため、24時間、365日受診でき、重症度に関わらず一次から三次まで対応できる、 いわゆる「ER」を基本とした体制となっています。

このような体制をとる病院は内地にも増えてきていますが、まだ少ないのが現状です。

当院は国内で最初に「ER」の体制を取った病院です。

なるほどですよね。とりあえず県立に運び込めば対応してくれるという態勢が、ふだんから出来ているわけだ。

そしてこれ:

Q: 沖縄では”たらい回し”がないと、新聞で報道されていました。
内地での患者受け入れができないという理由の一つにベッド満床が上げられていますが、中部病院が満床になると”たらい回し”となるのではないでしょうか。


A: 救命救急センターには診察後、経過観察を必要とする患者さんのためにベッドが20床備えられております。 症状軽減した患者さんは帰宅となりますが、さらに治療や検査が必要と考えられる患者さんは一般病棟に入院となり、移動していただきます。

その一般病棟が550床ということになります。一見たっぷりベッドに余裕がある印象があるようですが、実際は治療入院中の患者さんが沢山おられ、利用できるベッドは限られているのです。だいたい、毎日40名の患者さんが退院されて空きベッドが出ます。

そこに外来から約20名入院され、救命救急センターからも20名の入院があります。従って救命救急センターからの入院患者さんが多くなった場合には”中部病院が満床で入院が出来ない”ということになります。

しかし、われわれは先輩方から引き継がれた「空きベッドは作るもの」のポリシーのもと、あらゆる手段を尽くして、重症患者さんを受け入れるための空床を確保します。

そのために以下のようなことを行っています。

  • 病気がよくなり退院間近の患者さんへの繰り上げ退院依頼
    (申し訳ありません。無理なお願いをいつも快くお引き受け頂きありがとうございます)
  • 状態の落ち着いているものの経過観察のため入院が必要な患者さんには転院紹介(紹介をしていただいた病院へ逆紹介等)
  • 入院紹介先病院から中部病院への転院の延期依頼
  • 本院の外来から予定入院患者さんへの入院延期
  • どうしてもベッドが確保出来ない場合には責任を持って他病院に紹介

このように、たとえ満床状態であったとしても、我々は中部地区の、また、沖縄県の救急医療の最後の砦として、緊急の患者さんは受け入れる努力を続けております。 患者さんにもご協力を頂きたいことがあります。医師が診察した後、重症でないと判断された患者さんに関しては、中部地区内外の病院へ転院して頂く場合があること、 非常に患者さんが多い時は待ち合いのソファーや簡易ベッドなどで経過観察を行う場合もありますのでご了承頂きたいと思います。

ほーほーほー!! ですよ。

救急車や患者が困らなかったり労力が小さくて済むだけではない。このシステムなら県立病院に拠点機能ができるのだ。

病院間連携もピアピアではなく県立病院がハブになる構造だから、コロナ対応で一元管理のシステムを臨時に立ち上げたい、なんてときにも、常にやり取りしてる間柄だから信頼関係があるわけだ。

待合のソファーや簡易ベッドなどで経過観察を行う場合があるというのもすごく良い。救急車で待たされるより100倍はよい。ちょっと感動してしまった。

(ところで、内地では「医療崩壊は静かに起きる。なぜなら満床になれば患者がまったく運び込まれなくなり、救急車の音なんかも聞こえてこなくなるから」という話をよく聞くようになったけど、これは沖縄には当てはまらないわけだ。拠点病院がいかにも医療崩壊という感じに患者だらけになるから。)

システムづくりは日本人がメチャメチャに下手でアメリカ人はメチャメチャに得意というのがあるにしても、これはもう圧倒的に全国をこのようにしたほうがいいよね。

システムという家を自分で建ててその中に住もう。それが民主制である。