ワクチン接種者の世界

2週間ほど前に1回目のワクチンを打ってきた。

巣篭もり生活で体重が増えたオレは高BMI者の枠(通称デブ枠)で早期に接種券を貰えたので、すぐ予約サイトにアクセスしたところ、県の集団接種会場が当時まだガラガラで、翌日早速1回目を打てた。2回目は8月上旬に予定されている。

ワクチン接種者にとって、COVID-19は「ただのインフルエンザ」になる。接種してからデータを見ると、数字のそれぞれがおおむねインフルエンザなのである。

ワクチン接種者には以下のような変化が起きる(オレはまだ2回接種後2週間の「接種完了者」ではないので、ここからは数字からの類推である):

  • 罹りにくくなる。発症リスクはデルタ株で60-70%減なので1/3程度になる。すれ違って感染とか三密=危険といった強いストレスは消える。
  • 死ななくなる。重症化リスクはデルタ株ですら95%低減する。致死率1%が1/20と2桁近く落ちれば、インフルエンザとだいたい同じオーダに落ち着く。
  • たとえ感染しても感染させにくくなる。これに関するデータは見たことないけど、機序を考えると排出ウィルスカウント(微分値)も排出期間(積分値)も小さくなるはず。つまりマスクを付けなくてもいいかなと思いやすくなる。
  • 病院が普通の場所に戻る。高齢層の接種が進んで医療崩壊が遠ざかること、入院時の院内感染リスク等を考慮する必要がほぼ無くなる。

ワクチンの有効性は100%ではないので感染の危険はあるし、感染させる危険も相変わらず残っている。接種の進んだ国で再度感染が拡大しているのはそういうことだ。

しかしワクチン接種者にとってのCOVID-19とは「まず死なない病気」であり、それに強い注意を払うことはできなくなる。ワクチン接種者同士の会食や旅行による感染拡大リスク、危険度の高いスボーツなどによる入院リスクは、昨年のような青天井のものではなく、それ以前の人生で想定してきたレベルに落ち着く。

ワクチン接種者だけなら普通の生活ができるし、普通の生活を始めれば、心はこの病気から遠ざかっていく。

なにしろ、普通の生活をすることで感染が拡大したとしても、接種者自身のリスクはほとんど増大しないのだ。未接種者が死ぬことに心を痛めたとしても、自分にとっては「ただのインフルエンザ」のまま。緊急事態的な行動は不可能である。

これは普通に考えても接種者と非接種者の分断を招くと思うが、ここで考慮すべきは医学的に接種できない非接種者の存在だ。PEGでアナフィラキシーの既往がある人を筆頭に、医師と相談の上でワクチンを打てない人がいる。

彼らは当然にワクチンの集団免疫によって守られるべき者である。ワクチン接種率の向上が社会的目標になるのは、集団免疫とは免疫のある者が多数存在することで免疫のない者を守るシステムであり、それは自分で選んだわけではない運命に巻き込まれる者があってはならないという現代の社会正義の価値観に沿ったものだからだ。

だからそれ以外の、医学的に接種可能であるにも関わらず接種を忌避する者の立場は良くてフリーライダー、悪くすると加害者となる。社会の守護者+庇護者 vs. 加害者、という図式が成立するのだ。

忌避者には忌避者なりの論理や自然な感覚があるはずで、それを簡単に捨てることは想定できない。だからこれは、普通に考えられている以上の分断になる。大きな問題であり、彼らの信念に沿った説得が必要になるだろう。

ただ、これは問題だ、と書きながらも、頑固に接種拒否する人に対しては、オレも冷ややか以上の態度を取れるような気がしない。分断は見えてるが解決は思いつかず、予見し警告を発しつつも救済できるとは思っていない。

オレにできるのは、見えてしまった景色を書き記しておくことくらいである。