投票行動の制御、またはそれを無効にする方法

組織票というのが昔からまったく理解できない。特に、電力会社はどこどこに入れるから何票、みたいな、大企業の票が読めてしまうことに強烈な違和感があった。

これは「マトモな人間であれば秘密投票の仕組みも意味も知ってるし、投票の強制が違法であることも知っているのに、唯々諾々と従ってしまうのはおかしい」という感覚に由来するものだ。

若いときのオレの結論は「そういう会社は入るのが大変だろうとなんだろうとバカの集団だ」である。オレが就活とかやったことがないのはこのためである。脳の弱い人達の間で生きていけるとは、とても思えなかった。この考えは今でもかなり正しいと思っている。

しかし、いま観察に基づいて「票が読めるということ」を考えると、もう少し見えてくることがある:

  • 半強制的な「お願い」で投票するのは、ある「割合」の人間であり全員ではない(全員がバカじゃない)が、その割合はほぼ一定なので読める
  • 強制してくるような相手に本当に同調して入れるバカ(お人好し)は少なくない
  • 選挙のプロは、頼まれて投票「した人・しなかった人」が非常にわかりやすいらしい。次は「しない人」を除くので、読みは非常に正確になる

最後の話がポイントである。 これはむかし宮崎学か誰かの本で読んだ、現金が飛び交うような離島の選挙の話にあり、非常に印象に残っているのだが、こういうことである。

  • ある陣営からお金をもらって本当に投票した人は「目が合うとニヤッと笑う」「手を下ろしたまま小さくピースする」などのサインを送ってきがち
  • 投票しなかった人は目をそらす、話題を変えようとするなど、逃げの姿勢になりがち

「なるほどー!!」
オレは大変よく納得した。
「ここをハックすれば嘘つき放題じゃん!」


嘘つき放題かどうかはともかく、ここからわかることがある。「バカの集団」は、そこまでバカだらけというわけではなく、「人間関係がクローズドだと嘘がバレがちだから言われたことに従っておく人が多い」というだけのことなのだ(それもバカだと思うけど)。

Wikipediaのエントリを見ると、日本の秘密投票制度は

  • 他事記載の禁止 自書式投票の秘密投票では候補者の氏名(比例選挙の場合は政党名)以外の他事記載をした票を無効票としている
  • 投票所 投票所には投票の秘密を確保できるだけの設備がなければならない
  • 投票用紙 投票用紙は外部から透視されるおそれのない材質を備えたものでなければならない
  • 陳述義務の否定 選挙人が何人に投票したか陳述する義務はない

といった事項により保証されている。これは要するに:

  • 個人の投票内容を本人以外が知る方法がない
  • 嘘をついてよい

ということだ。

しかし、現代日本の実情を考えれば、これではまったく不十分である。

投票を強制する側が上記のように人間関係にべったりと張り付いた「知り方」を使ってくるのであれば、実態に合わせて、もっと積極的な防御を教育すべきだろう。つまり:

  • 投票について聞かれたら嘘をつくべきだ

である。

「投票にまつわる個人の秘密」を「積極的にウソを付くべきゾーン」とするのだ。エイプリルフールみたいなものだと思えばいい。(出口調査の人が困るって? 知らんよ。あんなのは開票速報が速く出したいという商売の都合にすぎず、付き合う義理なんかない。そもそも他人の投票内容を知りたがること自体が本来褒められるようなことではなく、ほとんど反社会的な行為である。メリットもあるから協力しないでもない、というだけのことだ。)

そして、嘘を付くべきだと教育するのであれば、きちんとバレない嘘の付き方も教育したほうが良い。だって投票を強制したがる側は常に強い立場、強制される側は弱い立場にあるからだ。嘘がバレたら報復が待っているではないか。これは「嘘をつくこと」が積極的に推奨される世の中になったとしても解決しない問題である。

だから、嘘を付く方法が普及したとしても、それを暴く方法も出てくるだろう。いたちごっこになる可能性はある。

それでも基本的には、彼らが知ろうとする方法、そのノウハウを逆転させることで、嘘を突き通すことができる。これは教育する価値のあることだ。 今のところは:

  • 「ニヤッとせよ」
  • 「ちゃんと投票しましたよと言え」
  • 「とにかく肯定的ゼスチャーを与えよ」

といったことである。徹底的に欺き通す方法を大々的に教えるのだ。

えっ? 子供が嘘をつくようになるって? その咎は、投票内容を知りたがる者たちにあるだろう。お前らが知りたがらなければ、こんな教育は必要ないんだぜ。

だいたい、こうした「嘘をつくノウハウ」って、大人になればなんとなく分かるものではあるよね。それでもバレちゃうのは、相手がプロだと思ったり、上司だったりすると、萎縮して嘘がつけなくなるからだろう。

大事なのは「バカは呑んでかかるべきである」という心構えの方なのかもしれない。

参考文献

上記の話が載ってる本、これだったような違うような…。立ち読みだったので手元にないのだ。