震災瓦礫の広域処理に関するリンク

瓦礫の広域処理に関しては、基準値がおかしいという話があって、徳島県庁の「目安箱」でのやり取りなど、いろいろな話が出ている。

自分としては、徳島県庁の話にあった100Bq/kgという基準値が「低すぎて」おかしいので、IAEAの原文を当たる必要があると思った。それで、0.1Bq/gという基準が示されている以下の文書を読んでみた:
Application of the Concepts of Exclusion, Exemption and Clearance Safety Guide


IAEAは強い制約を課せられた機関であり、基準を示すような文書はイントロからして面倒な法務文書になっていた。これを引用しながらなにか書こうとしたのだが、抄訳すら非常に面倒で書きあぐねていたところ、今週末になり、これにまつわる非常に良い記事がたくさん目につくようになった。

これほど良い解説がたくさん出回っているなら、自分で書く必要はなくなったと思うので、リンクをまとめておく。以下はIAEAの文書や自分の持つほかの知識と矛盾せず、説明が優れていると思われるページである。


おおまかなまとめ

  • 広域処理される瓦礫は福島以外の震災瓦礫であって放射性瓦礫ではない
  • 瓦礫は現地で検査、分別された可燃性のもの
  • 100Bq/kgは核施設から出る廃棄物を放射性物質ではないものとして除外するときの基準で、この基準が変更されたわけではない
  • 8000Bq/kgは焼却灰を埋め立て処分に回す基準で、通常の廃棄物焼却でバグフィルタにキャッチされるレベルはこれに近い
  • こうした値はIAEAの基準に従ったものである

基本的な理解はこんなところ。

広域処理される瓦礫はそもそも放射性物質として扱う必要のないものではあるが、処分先の住民感情に配慮してしっかり計測して処理しやすくしようとしているということ。

ゴミの広域処分そのものが難しい問題を含んでいるので、かなり慎重な提案をしたのに対し、数字だけに着目したヒステリックな反応が出てしまった、というのが現状だと思う。

自分としては、瓦礫の早期処理は重要な支援であり、沖縄には船積みで持って来られるので、焼却施設に余裕があれば、ぜひ受け入れるべきだと考えている。



解説へのリンク

まずはこれ。基準値の数字の根拠を非常にわかりやすく、かつ詳細に解説してるので、ぜひ読んでいただきたい:
100Bq/kgと8000Bq/kgの違い - 宮崎県議会議員 清山とものりブログ -清山知憲(きよやまとものり)公式WEBサイト-宮崎県議会議員



上記の解説では1mSv/yearを基準にしたとあるが、実際にはさらにその1/100の10μSv/yearを目指して設計しているという解説:
対象と処理方法 | 広域処理情報サイト 【環境省】 -津波による災害廃棄物処理を全国で-

この環境省の「広域処理情報サイト」はFAQも良いと思う。「政府の言うことなんか信用できるか!」という考えもあるだろうけど、わかりやすい。



以下は「基準値に対するよくある誤解とそれに対する反論」としても「感情のこじれ」としても興味深かった:
被爆者の子孫と震災瓦礫処理について話した - Togetter



関東の通常のゴミの焼却で出る放射性物質のレベルを示してるのがこれ。バグフィルタにキャッチされる値はもともと大きいことがわかる:
つくば市│クリーンセンターにおける焼却灰の放射能濃度測定結果にある「測定結果の推移(PDF)」。


可燃性瓦礫を広域処理する意義を現地で確かめたのがこれ。検査はちゃんと行われているわけで:
続 震災がれき|河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり



広域処理の枠組については、リスク学の中西準子先生が俯瞰して書いておられ、なかなか一筋縄ではいかない性質のものであることがわかる:
雑感581-2012.3.6「災害がれきの広域処理・処分をどう考えるか? −廃棄物処分の難しさと歴史を考えれば、もう一つのオプションを考えてもいいのではないか−」


これを機会に、もう少し地域エゴを解消できないものだろうか。