引き続きバスの無料化の話

9月の水曜日曜の沖縄全県バス無料。かなり浸透してて、めちゃめちゃ使われてます。

本日2024年9月15日も日曜なので無料デー。オレはそんなことは忘れてて、明日のピザ会のためにA-Price浦添店に行って一通りの材料を買ってました。

それから新しくって巨大なモール、サンエーパルコシティの成城石井に行ってサラダピザ用の生ハムを買ったろうと思い、海岸沿いの道に出て北上しました。まだまだ夏! の太陽が照りつけるド真っ直ぐな海岸通りをびゅーんと進んで右側にパルコシティが見えてきた…でも混んでるから通過…と思ったところで、モール前のバス停周辺に20人くらいの人影がいるのに気づきました。アシカのように思い思いの方角を向きリラックスして堤防の上にも乗っかってるけど、明らかにバス待ち。だってバス停以外になにも無いところだから。そして若者がめちゃめちゃ多い。

このバス停は那覇から来て宜野湾に抜ける32番や43番が停車するサンエーパルコシティ「前」です。今日バスで遠出しようと那覇バスターミナルから乗った方がいるんですが、パルコシティ方面向けは始発の那覇バスターミナルからいっぱいいっぱいだったらしい。バス停では那覇から来た人がたくさん降りて、北向きに戻る人がたくさん乗ったことでしょう。昭和みたいな景色です。

パルコシティに入る右折信号が2箇所ともぎっちり混んでたので、オレは2キロくらい先のコンベンションシティに回ることにしました。こちらもパルコシティの前にサンエーが作ったモールで規模は一回りも二回りも小さいんですが、おなじ生ハムが買えます。

そしたらコンベンションシティはコンベンションシティで、パルコシティ開店以来人が減り続けてたのは気のせいだったかと思うくらい人が多く、駐車場がいっぱい。中も人でいっぱい。連休の中日だからこういう場所が混むのは当たり前ではあるんだけど、普通に景気の良さを感じました。実に昭和っぽい。

人間は出かければカネを使ってしまうものなので、行きたいところに無料でどんどん行けることが景気に良い影響を与えるのは明らかです。

しかもこれには重複的な効果があります。低所得者ほど消費性向が高く、交通費の負担感が大きいからです。つまり、移動を激安にして負担なく消費の場に連れて行けば使いたいことに使えるお金が大きく増えるため、移動の動機そのものが増えるということ。未成年者に顕著だと思いますが、たとえば小遣い残り2000円で友達同士でどこかに行こうかとなったとき、バス賃で往復1000円取られるとなれば普通の選択は「出かけない」です。コンビニで500円消費してダベって終わる。ところが今日の高校生たちはパルコシティと海で遊んで2000円使い果たして帰るわけです。

これ、理論的には非常に当たり前のことなのに、やってみるまで気づかれてなかったことだと思います。

ていうか、オレがこれにちゃんと気づいてませんでした。台湾や中国で街がいつも人でいっぱいなのはそういうことだったのか! と今更ながら…台湾や中国を見てバスが安いのを素晴らしいと言い続けてきたこのオレ様が…「今更ながら」気付きました! こんなに効くなんて!!

もちろん今日みたいに爆発的に乗って出かけて消費するのは、無料が9月限りであると知れてる上に、バスで出かけたことがない人たちにとって初体験に近い物珍しいお出かけになるからです。それでも一過性ではない部分がしっかりあるのは、上の消費性向と交通費負担の関係からも明らかです。

人を連れ出すか連れ出さないかはすごく大きいです。消費という点だけではなく、気軽に出かければさまざまな刺激を受けて思わぬ発見もする。思わぬ出会いもある。家に籠もりっきりにならないという選択肢があらわれる。もちろん出かけたくない人は出かけなくてもよい。個人にとってはメリットしかない。

公共交通機関を安く充実させれば商売を含め「公共の福祉」になる。そういうことだと思います。日本以外の国で公共交通機関がきわめて安価なことと、日本以外の国がここ1/3世紀ほど着実に成長してきてることには少なくとも相関が存在する。

いやーすごいよ、この企画。

オレは実は九州旅行中に熊本で日曜無料デーに当たったことがあり、やってみて好評だったから続けてるといわれて、いまいちピンとこなかったんですよ。「これって誰が投資して誰が得をするの? 持続性あるの??」と思った。でも、地元でこれだけの変化を見せられてしまうと納得です。機能してなかった公共交通が機能して人が溢れてるのを見たら、なるほどここに投資できるんですねってなる。行政人も商売人も、人が実際に動くのを見れば何か手を出したくなるものなんだと思います。

あとはやはり、恒久的な値引き、それも8割や9割引いた状態を「あたりまえ」にすることがゴールじゃないでしょうか。中国のバスがだいたいこのくらいなんだけど、交通機関として非常によく機能してます。これが例えば半額だと、まだ自家用車のほうが安く移動可能なので本質的な変化は生まれないはずです。

自作の時刻表