obnizのクラウド接続標準提供が嬉しいのはなぜか

ひょんなことで手に入れたM5StickC with obnizOSが、2019年12月2日からクラウド接続できるようになります

これまでも、ネットに繋がってないとまったく動作しない、という意味では、obnizの「サーバ」には接続されていたわけですが、「cloud」の方に接続した状態でないと使えない機能というのがたくさんあって、たとえばブロックプログラミングや、DropboxGoogle Docsへの書き込み、Pythonからのプログラミングなどはできませんでした。

というか要するに、Hobby LiteライセンスではJavaScriptから動かすことしかできなかった。しかも、JavaScriptから動かすときに使う標準ライブラリにすら、本来クラウド接続が必要な機能があったようで、サーバ側の調整で突然動かなくなったりしました(フォーラムで言ったら、すぐ直してくれましたが)。

クラウド接続の標準提供により、今後はそういう問題は解消し、基本的にはobnizが提供するobnizらしい機能は、だいたい使えるようになる感じです。Pythonでプログラムすることもできるし、自動的にクラウドにデータを上げるとかも、すべてできるようになります。

なかでも一番の期待は、ブロックプログラミングができるようになることです。


M5StickCについていたHobby Liteライセンスは、だんだん盛り上がりつつあるobnizの世界とは、ちょっと離れた使い方しかできないやつでした。

だんだん盛り上がりつつある、というのは、たとえば「子供の科学」11月号から『obnizでスマートホームを作ろう』という連載が始まっていたり(子供の科学は毎月買ってますが、前のエントリを書いたときは記事を読んでいなかった)、『みんなのobniz入門』という入門書が出たりしてることから伺えます。

子供の科学編集部が「これなら使えるな」と判断したというのはとても大きくて、つまり、子供の科学は数十年に渡って電子工作記事を掲載してきたし、阿部和広さんのScratch連載あたりから、子供にわかるプログラミング記事を載せるようになり、いまはmicro:bitのプログラミング連載が盛り上がるなど、「誰にでも実践できる技術」に目が高いのです。

webにもこういうページとか作ってます。

prog.kodomonokagaku.com

コカでobnizが取り上げられるようになったのは、ブロックプログラミングの位置づけが絶妙だからだと思います。子供の科学のプログラミング記事というのは、基本的にブロックプログラミングなんですが、obnizのそれは、なかなか強力です。

  • JavaScriptコードをふくむHTMLのカプセル化であること
  • ブロックプログラミングでIoT遊びが可能であること
  • 多様なセンサや機器がカプセル化されて簡単に使えること

また、ライブラリのコードでは対応できない場合でも、

  • ブロックプログラムエディタからJavaScriptコードが直接見えて編集もできる

ので、お手本を見ながら自分のコードを付け加えていくことでプログラミングが学べます。

敷居が低く、できることが多く、天井が高い。

子供の科学11月号の記事ではスマホのカメラを使って顔を認識したらメッセージを出す、なんてプログラムを書いて見せてます。12月号はママが来たセンサ。どちらもブロック10個以内の短いプログラムです。たったこれだけの労力でこれほどのことができて、しかも細部に触れることもできるなんて驚愕です。

これなら誰でもアイディアをすばやく実装できるはず。なるほど子供の科学でも取り上げるはずだ!

…でも、こうした便利さに、これまでのHobby Liteライセンスからはアクセスできません。JavaScriptを直接書く以外のことができなかったため、なにかしようとするたびに、かなりの時間をライブラリの調査に割く必要があった。「がんばればできることはすごく多いけど、けっこう面倒な機械」だったわけです。ブロックプログラムならカプセル化されているものなのに。

もちろん、それが困るなら、ライセンスを買えばいいわけです。おそらくそれこそが、インストール済のM5StickCを安売りするという企画の意図でしょう。

ところが、人間は使ったことのない便利さは認識できないので、買わないわけです。「まあJavaScriptでも面白いじゃん」と、ちょっと遊んで放置する。つまり、安売りのM5StickCから入った人で、ライセンス購入に至った人の割合は非常に低くなってしまう。それではOSインストール済の機器を安売りした意味がぜんぜんない。

今回の変更は、購入ライセンスモデルからサブスクリプションモデルへの移行と同時に、この状態を修正して、オモチャというより便利な道具として認識してくれるユーザーを増やす方策、であるように思います。自分たちの世界を広げるという意味で、非常に正しそう。

うまいことやったなー、と思いました。

自分としては、このデバイスが、なんでここまで気になってしまうのか、イマイチよくわからなかった。仕事で全力で使うものとかではないので、ここまで気にする必要はない。しかし、ふつうの電子工作とは非常に違った世界が広がってそうな、唯一性がありそうな感じがあるので、ついつい動向を追ってしまう。

へーんな使い方が出てくることを期待してしまうわけです。

で、今回の動きを見ると、やはり徹底的にユーザーベースを大きくすることに注力してる。これはますます楽しみであるなあ、と思います。

いや、自分で作れよ。

そんな感じです。