昨日ひさびさにティーダにガソリンを入れた。目盛り1つ分残ってたので3/4から満タンにして、5000円くらいかかった。リッター159円で30リットルちょい。昨今の沖縄の標準価格だが、思わず「たっけー!!!」と叫んでしまった。
クルマに乗り始めると、ガソリンスタンドでは金銭感覚を麻痺させる心理防御が働くようになるものだ。学生の時から乗ってるとなおさらで、頑張ってガソリン代を捻出してるうちに、だんだん出費に慣れていく。移動費用を他と比べてメリット・デメリットを勘案したうえで「ちょっと高いけど、他より安くて利便性はずっと高いんだから、まあいいか」となる。
でも、EVに乗り始めると、そうした前提が全部崩れるんだよね。
EVは、特にソーラーand / or蓄電池との組み合わせがメチャメチャ安い。ウチの場合、さいきん払った電気代が、月1000キロ以上走ってるEVの充電もIH調理もエアコン使い放題も全部合わせて夏に5000円だった。同じ5000円でクルマ1台を300キロくらいしか走らせられないなんて…高い!!!!*1
でも、なんでこんなに差があるんだろうか。どこかで騙されてないか興味ないですか? というわけで、少し書く。
まず、この巨大な差には2つの要因がある。ひとつは純ガソリン車の熱効率がひどく悪いこと。もうひとつは、地産地消のソーラー電気のエネルギー単価がめちゃめちゃに安いことだ。
熱効率については、そもそもガソリンエンジンって普及してる動力源としては悪い方の部類だ。これはエネルギーの塊である炭化水素を燃やしておきながら、大きな温度差だけを使って残りを捨てちゃったり、わざわざ発電して電気火花で着火したりするため。圧縮熱で着火するディーゼルエンジンは効率が少しだけ良い。そしてこのガソリンエンジンを走行に直接使うため、熱効率がガタ落ちする負荷変動運転やアイドリングを多用することになる。低い回転から高い回転まで、そして低い負荷から高い負荷まで、止まることなくパワーを出す必要もある。つまり、もともと効率が良いとは言えないタイプのエンジンを、効率が悪くなるように悪くなるように使ってる。
こうしたことから、ガソリンエンジン車の熱効率はだいたい20%台で、新しい車でも30%くらい。それもピーク効率なので実用効率は10%台後半くらい。これがEVだと常時90%に近いため、まずここで4〜5倍の差がついちゃってるわけだ。*2*3
これを実感するにはkWhあたりの走行距離で考えるのがよい。ガソリン1Lはおよそ9.3kWhの熱量を持っている。純ガソリン車の燃費は最強ミライースのみんカラ収集データで22km/L弱。ウチのティーダの実走行で12km/Lくらいだ。これはそれぞれ22/9.3=2.37km/kWh、12/9.3=1.29km/kWhにあたる。もっと悪いクルマもいろいろあって、たとえばハンヴィー(ハマー)は5km/L、トランザム7000だと3km/Lとかだったらしい。それぞれ0.54km/kWh、0.32km/kWhとなる。
巨大アメ車は例外としても、現代の純ガソリン車の普通のkWhあたり走行距離は1〜2.4km/kWhといったところだろう。一方でEVだが、ウチの最弱電気自動車こと i-MiEV M は電費を測ってみたところ10km/kWhほど走る。ただこれはエアコンを切ってたからできた高電費で、エアコンを点けると7km/kWhくらい。リーフが7〜8km/kWh程度というので、負けてるかもしれない。bz4xで実電費5km/kWh。総合的には5〜10km/kWhくらい走る感じ。純ガソリン車と比べると、やはり熱効率の数字通り、4〜5倍得してるということである。(ちなみにハマーEVは2.5km/kWhくらい。5km/L⇔0.53km/kWhの内燃機バージョンの4.65倍の効率)
さて、熱効率に大差があっても、ガソリンのエネルギー単価が圧倒的に安ければ、ガソリンが「たけー」ってことにはならないはず。でも当然ながら、そこまで安くない。原油を輸入しガソリンを精錬してスタンドまで持ってくるとそれなりに費用がかかるだけでなく、リットルあたり53.8円という多額の揮発油税に消費税まで乗っかってくるからだ。
ガソリン1Lはおよそ9.3kWhの熱量だった。これが沖縄の安いスタンドでいま税込み158-160円程度なので、エネルギー単価はほぼ17円/kWhとなる。
大会社から電気を買うと、いま1kWhがだいたい税込み45円。45/17=2.64で、ガソリンが2.6倍強有利になる。熱効率はEVが4〜5倍有利だったので、これを加味すると4.5/2.64=1.7で、費用あたりの走行距離は1.7倍ほどEVが有利。このくらいなら純ガソリン車の1.5倍の熱効率があるハイブリッド車で勝負になる。
でも、これはEVが買電で走ってる場合だ。ソーラー発電なら電力会社から買うより遥かに安い。
ソーラー発電の電力価格はLCOE(平均電気コスト)という計算で測る。これは設備の寿命の間の総発電量を総費用で割るんだけど、なにせソーラーオフの特売で1万円の400W級パネルが寿命30年以上で年間400kWhも発電してくれる世界だ。この場合のパネル単体LCOEは400*30=12000kWhの総発電量をパネル価格1万円で割るので1円/kWhを切ることになる。付帯設備にいろいろかかるんだけど、全部合わせて昨今の家庭用発電設備のLCOEは7〜8円/kWhくらいとされてる。ウチは全部自分で工事しててこれよりメチャメチャ安いけど、試行錯誤で浪費もしてるから見込み5円/kWhくらい。
こうなるとエネルギー単価でもEVが3倍有利で、熱効率と合わせて合計10〜15倍くらいお得ということになる。どこにも騙されるような部分はない。熱力学と量産効果でひたすら押してるだけ。
どうでしょう。内燃機関車に乗るの、バカバカしくならない?
もちろん、ハイブリッドなら買電で充電してるEVと費用があまり変わらず、遠出の際は高価な急速充電が必要なEVよりも安い。使い方によってはこちらを選択する手もあるだろう。
でも、純ガソリン車はどうか。本体価格こそまだ最安だけど、燃料も高ければ維持費用もかかる。EVなら不要なオイル交換や、回生ブレーキがないために酷使されるブレーキなど、世話の焼ける部分が多くて税金も高い。逆にEVはこれらが不要で維持費がさらに安くなる。
オレはもうEVしか買う気がしなくなりましたよ。それでも寿命の短い三元系リチウムイオン電池車は買う気がしないんだけど、SCiBやLFPバッテリーなら永遠に乗れるくらいの寿命がある。あとは外充電がもうちょっと良くなる(安価&数が増える)と嬉しいかな。
近い将来、田舎の貧乏人ほど全部EVになると思う。ガソリンスタンドが消えても大丈夫ってのもデカい。

