沖縄でマトモな距離の自動運転バスの実証実験

那覇の隣の豊見城市で自動運転バスを走らせてみるらしい。

www.city.tomigusuku.lg.jp

チラシ

これ、なかなか画期的ですよ! なにせ路線図がこう。

豊見城市は東西に広くて、西にある海の側のショッピングモールであるイーアスから、北東の丘陵地の嘉数の集落(宜野湾市の嘉数とは別)までは直線距離で6キロくらいある。ここを往復しながら先でくるっと一周する循環路線で、総延長は18キロ程度とのこと。

テクテクライフで細かく回ったから知ってるけど、嘉数の丘から長嶺小学校あたりは丘陵が細かく、アップダウンが頻繁で、急な坂道も少なくない。EVはそういった場所を静かに力強く走れる。昭和後期に拓けた住宅地なので、オーナー層は多くが老人。既に免許を返納して移動手段を手放した方もメチャメチャ多い。実はコミュニティバスを走らせるのに良い場所だと思う。

現代の公共交通というのは、大量輸送で成り立っているところがある。大きな設備投資と運行費用がかかるものの、これは1人乗っても100人乗ってもあまり変化のない固定費となっており、多数の乗客でそれを頭割りにすることで一人あたりの単価を劇的に下げる。これはとても有効な方法だが、運行あたりの固定費がそれなりにかかるため、絶対的な乗客数がないと現実的な運賃で運行できない。低密度化したコミュニティには向かない。

自動運転EVバスは、小さい集落を回るコミュニティ交通に本質的に適したものとなる。つまり、人件費と燃料費が最小限しかかからないため、運行あたりの固定費がきわめて小さく抑えられ、分散すべき費用がほぼ初期費用のみとなるのだ。

大量輸送が必要にならない公共交通、というのは人口密度の低い地域での移動の自由の確保に最適である。バスなので速度は上がらないだろうが、それでも自由に移動するための手段が家のすぐそばに来てくれるというのはありがたい。老人、子供、学生といった交通弱者に移動の自由のミニマムアクセスを提供する方法として、とても優れているはずだ。

現在はまだ車両も高く、無人化もできず、ソーラーが普及してないために電気代もかかる。でもそれは単なる時代のパラメータだ。将来こうしたコストは必ず大きく減っていく。限界費用はとてつもなく安くなる。そうなれば、交通弱者にも強者にもメリットのある、本当の意味での公共交通という、きわめて重要なインフラになっていく。

だからオレが思うのは、実証実験ならば、将来の発達の方向性を見据えて安くすべきだったんじゃないの? ということだ。1日100円乗り放題とかにしたかった。1回190円だと往復380円かかるので、高校生にはちょっと大きいと思う。行きたいところに気軽に行けると、さまざまな副次効果が生まれる。

kamosawa.hatenablog.com

イーアスを含む海沿いの埋立地は近年大規模開発で賑やかになった場所で、市役所や中央病院もある。バスはそのへんをちゃんと回るし、有名なアウトレットモールにも寄る。老人が病院に行ったついでに、子供や孫の話に出てくるモールで買い物。あっちでこれ買ってきたんだよ、って話題にできる。QoLがとても上がる。目に浮かぶようだ。

いやー楽しみですね実証実験。イーアスまで乗りに行きますよ。自分のクルマでw

まだガソリン車で消耗してるの?…とか言わんけどさ。

昨日ひさびさにティーダにガソリンを入れた。目盛り1つ分残ってたので3/4から満タンにして、5000円くらいかかった。リッター159円で30リットルちょい。昨今の沖縄の標準価格だが、思わず「たっけー!!!」と叫んでしまった。

クルマに乗り始めると、ガソリンスタンドでは金銭感覚を麻痺させる心理防御が働くようになるものだ。学生の時から乗ってるとなおさらで、頑張ってガソリン代を捻出してるうちに、だんだん出費に慣れていく。移動費用を他と比べてメリット・デメリットを勘案したうえで「ちょっと高いけど、他より安くて利便性はずっと高いんだから、まあいいか」となる。

でも、EVに乗り始めると、そうした前提が全部崩れるんだよね。

EVは、特にソーラーand / or蓄電池との組み合わせがメチャメチャ安い。ウチの場合、さいきん払った電気代が、月1000キロ以上走ってるEVの充電もIH調理もエアコン使い放題も全部合わせて夏に5000円だった。同じ5000円でクルマ1台を300キロくらいしか走らせられないなんて…高い!!!!*1

でも、なんでこんなに差があるんだろうか。どこかで騙されてないか興味ないですか? というわけで、少し書く。

まず、この巨大な差には2つの要因がある。ひとつは純ガソリン車の熱効率がひどく悪いこと。もうひとつは、地産地消のソーラー電気のエネルギー単価がめちゃめちゃに安いことだ。

熱効率については、そもそもガソリンエンジンって普及してる動力源としては悪い方の部類だ。これはエネルギーの塊である炭化水素を燃やしておきながら、大きな温度差だけを使って残りを捨てちゃったり、わざわざ発電して電気火花で着火したりするため。圧縮熱で着火するディーゼルエンジンは効率が少しだけ良い。そしてこのガソリンエンジンを走行に直接使うため、熱効率がガタ落ちする負荷変動運転やアイドリングを多用することになる。低い回転から高い回転まで、そして低い負荷から高い負荷まで、止まることなくパワーを出す必要もある。つまり、もともと効率が良いとは言えないタイプのエンジンを、効率が悪くなるように悪くなるように使ってる。

こうしたことから、ガソリンエンジン車の熱効率はだいたい20%台で、新しい車でも30%くらい。それもピーク効率なので実用効率は10%台後半くらい。これがEVだと常時90%に近いため、まずここで4〜5倍の差がついちゃってるわけだ。*2*3

これを実感するにはkWhあたりの走行距離で考えるのがよい。ガソリン1Lはおよそ9.3kWhの熱量を持っている。純ガソリン車の燃費は最強ミライースみんカラ収集データで22km/L弱。ウチのティーダの実走行で12km/Lくらいだ。これはそれぞれ22/9.3=2.37km/kWh、12/9.3=1.29km/kWhにあたる。もっと悪いクルマもいろいろあって、たとえばハンヴィー(ハマー)は5km/L、トランザム7000だと3km/Lとかだったらしい。それぞれ0.54km/kWh、0.32km/kWhとなる。

巨大アメ車は例外としても、現代の純ガソリン車の普通のkWhあたり走行距離は1〜2.4km/kWhといったところだろう。一方でEVだが、ウチの最弱電気自動車こと i-MiEV M は電費を測ってみたところ10km/kWhほど走る。ただこれはエアコンを切ってたからできた高電費で、エアコンを点けると7km/kWhくらい。リーフが7〜8km/kWh程度というので、負けてるかもしれない。bz4xで実電費5km/kWh。総合的には5〜10km/kWhくらい走る感じ。純ガソリン車と比べると、やはり熱効率の数字通り、4〜5倍得してるということである。(ちなみにハマーEVは2.5km/kWhくらい。5km/L⇔0.53km/kWhの内燃機バージョンの4.65倍の効率)

さて、熱効率に大差があっても、ガソリンのエネルギー単価が圧倒的に安ければ、ガソリンが「たけー」ってことにはならないはず。でも当然ながら、そこまで安くない。原油を輸入しガソリンを精錬してスタンドまで持ってくるとそれなりに費用がかかるだけでなく、リットルあたり53.8円という多額の揮発油税に消費税まで乗っかってくるからだ。

ガソリン1Lはおよそ9.3kWhの熱量だった。これが沖縄の安いスタンドでいま税込み158-160円程度なので、エネルギー単価はほぼ17円/kWhとなる。

大会社から電気を買うと、いま1kWhがだいたい税込み45円。45/17=2.64で、ガソリンが2.6倍強有利になる。熱効率はEVが4〜5倍有利だったので、これを加味すると4.5/2.64=1.7で、費用あたりの走行距離は1.7倍ほどEVが有利。このくらいなら純ガソリン車の1.5倍の熱効率があるハイブリッド車で勝負になる。

でも、これはEVが買電で走ってる場合だ。ソーラー発電なら電力会社から買うより遥かに安い。

ソーラー発電の電力価格はLCOE(平均電気コスト)という計算で測る。これは設備の寿命の間の総発電量を総費用で割るんだけど、なにせソーラーオフの特売で1万円の400W級パネルが寿命30年以上で年間400kWhも発電してくれる世界だ。この場合のパネル単体LCOEは400*30=12000kWhの総発電量をパネル価格1万円で割るので1円/kWhを切ることになる。付帯設備にいろいろかかるんだけど、全部合わせて昨今の家庭用発電設備のLCOEは7〜8円/kWhくらいとされてる。ウチは全部自分で工事しててこれよりメチャメチャ安いけど、試行錯誤で浪費もしてるから見込み5円/kWhくらい。

こうなるとエネルギー単価でもEVが3倍有利で、熱効率と合わせて合計10〜15倍くらいお得ということになる。どこにも騙されるような部分はない。熱力学と量産効果でひたすら押してるだけ。

どうでしょう。内燃機関車に乗るの、バカバカしくならない?

もちろん、ハイブリッドなら買電で充電してるEVと費用があまり変わらず、遠出の際は高価な急速充電が必要なEVよりも安い。使い方によってはこちらを選択する手もあるだろう。

でも、純ガソリン車はどうか。本体価格こそまだ最安だけど、燃料も高ければ維持費用もかかる。EVなら不要なオイル交換や、回生ブレーキがないために酷使されるブレーキなど、世話の焼ける部分が多くて税金も高い。逆にEVはこれらが不要で維持費がさらに安くなる。

オレはもうEVしか買う気がしなくなりましたよ。それでも寿命の短い三元系リチウムイオン電池車は買う気がしないんだけど、SCiBLFPバッテリーなら永遠に乗れるくらいの寿命がある。あとは外充電がもうちょっと良くなる(安価&数が増える)と嬉しいかな。

近い将来、田舎の貧乏人ほど全部EVになると思う。ガソリンスタンドが消えても大丈夫ってのもデカい。

*1:まあ、この電気代は蓄電池が切れて買った分を払ったもので、ウチの発電コストとは直接関係がない。とはいえ実際にも月間1000kWhくらい発電して5000円払うということは5円/kWhの気分で使ってるわけで、この額は実際のウチの発電コストと同額だから、実感は間違ってない。厳密に言えば最初に投資した設備償却費用を月割りしたのと合わせて10円/kWhの生活をしてるんだけど、償却費用は見えないので実感はこれでよい。

*2:余談だが、ハイブリッド車が純内燃機関車よりはるかに高効率なのは、充電特化による定速定負荷の高効率運転が可能だから。いまや熱効率40%台を達成してるらしい。

*3:内燃機関の効率はモーターよりは悪いけど蒸気機関よりは大幅に良い。蒸気機関車の熱効率は10%以下で、鉄道の無煙化には燃料費用削減の面があった。

リーダーには睡眠を取る義務がある

高市早苗ワークライフバランスを捨てるという話、「トップがそれじゃあ下も巻き込まれて」とかの批判が多いけど、本質的にはそこじゃないと思う。オレが気になってるのは、

リーダーには睡眠を取る義務がある

というのに、彼女がそれを放棄すると宣言していることだ。

ワークライフバランスを捨てて馬車馬のように働くという発言は、睡眠時間の削減を暗示してる。前に小泉進次郎のインタビューを読んだときも感じたが、自民党の政治家の皆さんには非常に安易に睡眠時間を削って活動時間を確保する文化があり、これはほぼ実行されるものだと思う。

米軍は睡眠について徹底的に研究してフィールドマニュアルに落とし込んでいるが(たとえばフィールドマニュアル7-22 https://home.army.mil/cavazos/5517/2115/1094/FM_7-22.pdf の11章。章全体が睡眠について書かれてる)、そこではこのように書かれている:

"睡眠の健康には、睡眠時間(duration)、睡眠のタイミング(timing)、睡眠の連続性(continuity)という、相互に関連した3つの基本的な原則があります。このうち、睡眠時間が最も重要です。なぜなら、脳の健康と機能は主に、確保された睡眠量の直接的な関数であり、より多く睡眠を確保するほど良くなるからです。" (Geminiで翻訳)

脳を正しく機能させるには睡眠が必要である。

国家が行う仕事は小さな決定の影響が多岐にわたって国中に及ぶ。だから思考を深め、思考速度を速め、粘り強く考え続ける必要がある。それには長い睡眠によって大脳新皮質を休めることが不可欠だ。

睡眠は大脳新皮質に効く。睡眠を取ってリラックスすればするほど、大脳新皮質のギブアップが遅くなる。論理が遠くを見渡せるようになる。それに至る速度も上がるので、良いことしか無い。これらは化け学的なプロセスなので、他の方法で適当に補うことはできないし、睡眠により確実に改善することである。

そして、疲れて根気の無い脳が下す判断には大脳新皮質の関与する割合が減る。つまり、古い脳の短絡的判断に寄っていく。古い脳が判断するということは判断が動物的になるということで、ヒトという生物種の判断が動物的になるということは、「野生動物のように研ぎ澄まされた判断」ではなく「旧石器時代の小さな村での生活で必要な判断」に寄るということだ。

高市早苗は、これまでも非常に高頻度で間違えてる。直近だけでも、奈良の鹿を蹴る外国人観光客がいるとか(いない)、通訳がいないために不起訴になる外国人犯罪者の割合が高いとか(起訴率は日本人より高い)、まさに反射的に飛びついてキャッチーなことを言ってしまっている。それは人口150人以下の旧石器時代の村落では最適戦術だったかもしれないが、現代では違う。

就任演説で張り切って出すコメントが「ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる」だったり、政権批判が常に「動きが遅い」だったりする彼女は、そもそもが小忙しく忙殺された状態が好きな人なんだろう。今でもワークライフバランスはギリギリであるはず。

そんな人が、さらに忙しく、さらに睡眠を削って国の舵取りをやると張り切っているのだ。氷山にぶつかる予感しか無いではないか。

もう一度いう。リーダーは睡眠を取る義務がある。

特に、短絡的に飛びついて間違えないためには睡眠が必要だ。

偉い人は忙しいものである、という日本文化の間違ったところを強調する「保守思想」は有害でしかない。これは絶対に改めていただきたいものである。

https://home.army.mil/cavazos/5517/2115/1094/FM_7-22.pdf


追記: そういえば『まりんこゆみ』の日米合同演習の話で睡眠についての日米差の話があった。

これは第123回。

sai-zen-sen.jp

この演習の話は114回からいろいろ挟みつつ137回まで続く(確認したw)。興味ある方はどうぞ。「あちらの世界」の常識がたくさん載ってるこの物語はなかなか良く出来てます。 こないだ落選した自衛隊出身議員佐藤正久が頼りになる上官として出てきて、内向きにはこんな顔に見えてるんだな、と確認できたりするのも興味深い。

sai-zen-sen.jp


科学とカネ勘定は人生の両輪

深圳に行ってる秋田先生の投稿がとても刺激的で面白い。新しく出来た深圳の科学館、自動運転タクシー、スタートアップの超楽しそうな開発現場訪問、展示会で見る新技術、書店、最新の開発ガジェットお試しから街の変化の様子や車中泊みたいなホテル等々まで。

一例:

この科学技術館がすごく良い。今回秋田先生は3回くらい行ってるんだけど、初回のことをNoteに書いてる:

note.com

グラフ理論から巡回セールスマン問題経由でスマート物流に繋げるとか、数学も技術もわかってるキュレーターがしっかり予算をもらって作り上げてるとしか思えない。めちゃめちゃ進んだ展示。


いま中国は全体的に科学に注力し、科学に詳しいリーダー層が政策を決めて、あらゆるレベルで実行してる。

ソーラーパネルやバッテリーやEVはいま中国が世界で一番進んでるし研究投資も世界一おこなわれてる。原子力技術も自前でどんどんやってるし、ロケットもロシアのコピーから脱却して定期的な有人宇宙飛行どころか火星までやってる。すごすぎ。

また、ソーラーやバッテリーの政策投資の方向性を見てると、政府が市場を非常によく理解してることがよくわかる。

たとえばいま、ナトリウムイオン電池が立ち上がりつつある。ナトリウムイオン電池はエネルギー密度が明らかに低いんだけど、三元系バッテリーと違って資源制約がなく、LFPと違って-40℃〜80℃まで普通に使え、製造技術の発達に伴いどこまでも安価になれるので、性能向上がうまく行けば素晴らしい社会要素になる。

これが最近実用化され、この春にEVに初めて搭載されたというニュースが来た…と思ったら、1ヶ月後にはAliexpressで売ってるのを見つけた。アリエクで売られてるということは工場で爆速量産して検査落ち品がどんどん出てるという意味。速すぎる!!!  

しかもしかも。春から売られたのは実用化第一陣と思われる70Ah級のセルなんだけど、夏からは3倍容量の200Ah超級が売られるようになった。

さすがに3ヶ月で70Ahのラインへの投資が回収されてるはずはない。まだナトリウム電池の安価さは発揮されてないから儲かってるはずもない。

それでも新世代が出てくるのは、もう前倒しでデカい電池を作るラインに投資できちゃってるということ。投資できるのは、政府の蓄電プロジェクトで使われまくるようになったから。容量単価を下げれば勝てるとわかっているならどんどん投資すべきなのだ。

こうしたことから、政策投資がめちゃめちゃ適切で多額である、ということがよくわかるわけ。なんだかんだと複雑にしちゃったり新規開発物に完璧を求めたりハックされて変な使われ方をしても修正できない日本のそれとはだいぶ違う。


「科学とカネ勘定は人生の両輪」

というのはオレのキャッチフレーズの中でもよく使う、まあまあよく出来たやつのひとつ。科学は自然を理解することであり、カネ勘定は人間社会を理解することである。人生をよく生きるには両方が必要だ。

そして、中国はまさに科学とカネ勘定のわかってる国になってるなー、と思う。『秘密国家ICE』かよってレベル。

それでもオレは中国に住みたいとは思わないんだよね。やっぱり政府が怖いから。

中国嫌いとかではぜんぜんない。むしろ、日本よりよほどみんなが好き勝手にやってる、「上に政策あらば下に対策あり」の社会であることはよく知ってる。

10年くらい前までは何度も香港・深圳あたりに行った。広州で街中のロータリーを流れるクルマたちを眺めてたところに現れたEVリアカー(手作り。おじさんがハンドル部にぶら下がってジャンプしながら爆走してた)を見たときは、こういうのがOKなら生きてられるなあ、と強く思った。

でも、オレは不用意な真実を言わないと気が済まない人間であり、あの政府と仲良くやるという感じがもう、どうにも耐え難いんだよね。アシモフの自伝に、ヒトラーと握手したフォン・ブラウンの手と握手したくないから宇宙関係の魅力的なイベントに招聘されるのを断る話があったと思うけど、そういう感じがある。アシモフよりはだいぶスケールの小さい話だが。

政策にはクレバーに対策し、したたかに生きる。それが中国での正しい生き方だ。でもオレはしたたかに生きるより、愚かに見たもの全部を叫んでいたい。しかも本質にのみ興味があるから、すごくアカンことを叫びたい。このタイプの人間に今の中国は無理である。必ずやらかす自信がある。

それじゃあ…キャッチフレーズの方をいじって、

「科学とカネ勘定と言論の自由は人生のトリニティ」

と変更するのはどうだろう。

…いや、キャッチフレーズなのに聞いてすぐ理解できないのは駄目だ。むしろ完全に意味不明になってる。アカンw

ただこれ、もうちょい根本的に考えると、変える必要はないのではないか。

科学のプロセスって民主制のプロセスそのものだ。科学と民主制は精神的に同じものであるというのは、オレの持論である。つまり、科学の成果だけを使って共産党独裁をやってる中国は「科学を理解してる国」ではあっても「科学の国」ではありえない。

じゃあいいや。キャッチフレーズはこのまま。

Apple税を回避しよう(Mac miniを超高速の外付けSSDから起動すると安くて快適)

ウチのM1 Mac miniApple Silliconデビュー作のやつをお試し気分で買ったので最小構成。8GB / 250GBしかない。 いまのMacはメモリもストレージもハンダ付けされてて交換・増設不能。 ちょっと増やすとバカ高いので小さく買いたくなるのだが、メモリは諦めるにしてもストレージが小さいくらいで使いにくくなるのは凄く理不尽。 外付けで拡張するとUSBでレイテンシがでかく、内蔵と外付けの速度格差がひどくて使い物にならない。

…と思ってたんですが。

いまの MacFirewire 3/4 は PCIe がそのまま出てるみたいな構成になってて、対応の外付けケースを使うとM.2のSSDが高性能のまま使えるらしい。上記の認識は単にオレが浦島太郎なだけでした。

そんなわけで起動ドライブごと引っ越すことにした。2Tバイトもあれば足りるやろ。

使った部品:

SSD:
ADATA SLEG-900P-2TCS-DP (M.2 2280 2TB) ドスパラ限定モデル

www.dospara.co.jp

ドック:
【三画面対応】Mac Mini 拡張ハブ 10in1 Thunderbolt 3対応 40Gbps高速データ転送・8K出力対応 M.2 SSD拡張(8TBまで) 内蔵冷却ファン搭載 3画面同時出力 USB-C/USB-A/HDMI/DP/SD/TF対応 アルミ合金製

  • ドックにSSDを仕込み、Mac miniのThunderbolt端子(2つしかないUSB-Cの口のひとつ)に接続。こいつは電源アダプタもUSB-Cだったりするけど、まあ間違えないようにいろいろ書いてある。
  • 「読めないディスクだよ」と言われるのでAPFS / GUIDパーティションマップで初期化。
  • 新ディスクの初期化が終わったら「システム終了」でMacの電源を落とし、電源ボタン長押しで立ち上げ。これで内蔵SSDからの起動の他に「オプション」が選べる状態になる。
  • オプションの中で「再インストール」を選び、新しいディスクにインストールするようにする。
  • これをするとAppストアからダウンロードしてインストールするので、当初9時間とか出てビビるんだけど、まあそんなにはかからない。1時間半とか2時間とかそういうオーダ。
  • インストールが終了したら移行アシスタントで元のSSDからコピー。これは買い物に行ってる間に終わったので2時間はかかってない。最速なら届いてから全部合わせて3、4時間で終わるはず。
  • 立ち上げてみると、Karabiner-Elementやらが動かなかったりして、いろいろ細かい不具合が出る。まあ、あたりまえにやれば解決する。Karabiner-Elementについてはバージョンを一度戻したりして少し面倒だったけど、まあ親指シフトとか使ってない人には関わりのねえ話です。
  • 使えるようになってみると、使用感はすごく普通。内蔵で起動した時と変わらない。拍子抜けしちゃうくらい普通。
  • Windowsのディスクベンチの定番のCrystal Disk MarkのMac版デッドコピーみたいなAmorphas Disk Markで性能を計測してみるたところ、ピーク性能は内蔵のほうがちょっと良いけど、ほぼ互角。外付けの方が良い数字が出てる部分もちょこちょこある。体感だと、正直まったくわからんね。

結論として、非常に有効な方法だと思う。
このまま使いますよ〜。

『イングランド銀行公式 経済がよくわかる10章』は経済学が夢のように頭に入る本

数日前に買ったこれ、細かく読んでたらいまだに読み終わらないんだけど素晴らしすぎてビビるので、もう紹介しとく。

イングランド銀行公式 経済がよくわかる10章』は、イギリスの中央銀行BoEエコノミストの2人が書いた一般向け経済学入門書の日本語版。内容はミクロもマクロも網羅してて本文400ページくらい。400ページと言うと長いけど段組みは緩いし文体も平易。例示とか超日常的で読みやすい顔してる。新書3冊分の分量で経済学が概括できる本…みたいに見えるw

原題も "Can’t We Just Print More Money?: Economics in Ten Simple Questions (なんでお金をもっと刷るんじゃいけないの?: 10の簡単な質問で見る経済学)" である。すごく簡単そうだよねw

実際、本屋で全体ぱーっと拾い読んだ感じは「めっちゃ網羅してるのに楽に読める書き方ですごいなあ」くらいだった。この時点で買いは決定だったんだが…w

ちゃんと読むとわかる。これ、The Economistなんかにも通ずる「死ぬほど簡潔な書き方で全部を伝える文体」の経済学教科書バージョンだ。

イギリスの短い文章の伝統は簡潔性を旨としながら内容をまったく落とさないところに真髄がある。日本のミニマリズムにも通ずるところがあるんだけど、イギリスのそれはユーモアや日常に接地させる例示なんかすら落とさないまま簡潔化する。

これは高度な内容ほど発揮されて、たとえばNatureやScienceといったイギリスの論文誌に共通するのは「1本の論文がきわめて短く、1語1語を厳密に用いて高度な内容を伝わるように書いてある」ことである。有名なワトソンとクリックの二重らせん論文はその年のNatureの論文賞(内容ではなく形式に与えられる賞)も取ってるんだけど、あの高度な発見を伝える分量は、わずか2ページだ。

これ、イギリスの文化なのか、高度知識層向けの本は全部そうで、The Economistも毎号の編集コラムが1ページで本当に強烈な真実を伝えてくるので有名(ちなみにイギリスのこういう専門誌の「編集者」って日本の編集者のイメージと全然違い、編集専業の文系職ではなく雑誌の分野の最高度の専門家であるのが普通)。

そんなわけで、このBoE本も圧縮率がすごい。

たとえば1枚目の写真は本文の61ページ、序章とかが長いんでここはまだ1章の33ページ目なんだけど、もう代替材と補完財の説明が出てくる。これが出てくるということは需給の話を既にしっかりやってるということで、マンキューのミクロ(日本語第二版)だと100ページになるまで出てこないような概念(写真2)。

BoE本の代替財と補完財
マンキューミクロの代替財と補完財

マンキュー経済学は分厚い2冊組の経済学の教科書で1冊目がミクロ編、2冊めがマクロ編になってる。

オレがよく言う「マンキューのミクロ」とはこのミクロ編のことで、カネ勘定が好きな高校生とかに、まずこれだけ読め、と渡すやつ(ミクロのわからんやつがマクロをわかることはない)。分量はミクロ編の本文だけで700ページ弱あるけど、アメリカの教科書って説明をまったく端折らずに全部書くことで学習曲線の勾配を緩めて独学を可能にするスタイルだから読みやすい。

そしてBoE本の恐ろしさは、まさにここのところにある。

写真1と2の内容を見てもらうとわかるけど、文章の平易さや密度感がマンキューと同じくらいに見えるんだよね。なんならBoE本の方が読みやすいまである。

でも概念と用語はしっかりと結びつき、経済学の概念が頭に入っていく。さらっと書いてあるからさらっと読めちゃうけど、あとからアレッ? と思って立ち戻って読むと全部書いてある。実におそろしい。

巻末にちゃんと索引があるので、経済学の用語に疑問を感じたときに引く小辞典のようにも使える。説明を読み直すのも簡単だ。

さらっと読める。ちゃんと理解もできる気がする。大したことを読んでる気がしないのに、本当は全部書いてある。だからいつの間に学べる。

この調子がミクロのみならずマクロの話まで続く。マクロは定量的にやると圧倒的に難しくなるのでサワリ(学者の間で形成されてるコンセンサスの結論部分)だけだけど、なにせ著者たちはBoEエコノミスト、つまり世界一レベルのマクロ経済学専門家だ。簡潔な解説でも街場の議論より圧倒的に世界経済が理解できるようになる。

イギリスのエリート知識人のレベルの恐ろしいことったら!!

もちろん専門家になるなら、もっと細かい数学的モデルの検討のしかたとかも知らないといけない。この本はそういう部分はぜんぜん載ってない…というか数式…どころか図表すらない。文章だけを読めばビジュアルに理解できるというストロングスタイル。白樺派かよ…w

人口の7割の人が経済学を7割理解できればコミュニティはまったく違ったものになる。この本は9割の人に9割の経済学がわかるように書いてある。オレの読者なら適当に読んでも7割は達成できちゃうんじゃないかな。

これはイギリスのこわいひとが書いた優しい本。 本線の知識が楽に手に入る夢の本だ。 死にたくなければ読め! 科学と金勘定は人生の両輪ッッッ!!!

…というわけで、ぜひどうぞ。(2200円しかしないってのがまた頭おかしい。マンキューにいくら費やしたと思ってんだw アンリミにも入ってるし。)

特定保健指導にダイエットの効果はあるか

そっれっだっけっなっらっばっ まっだっいっいっがっ!!(ちがう)*1

金曜に保険相談センターに行って特定保健指導を受けてきた。どんな生活をしてるか洗いざらい白状して生活改善の目標を立てアクションプランを自分で設定し、保健師さんが定期的に進捗チェックの電話をしてくるというガチめのやつ。

現代人の健康生活習慣の問題は、なんといってもこれである:

"健康の知識はあるが、実行に飽きる"

もともと自覚はあるので、なんか変わるきっかけになるんかなと受診したわけです。お手並み拝見(えらそう)といったところです。

そんでまあ、事前に問診票書いてる時点で明らかだったけど、オレの生活は完全に食いすぎ。たぶん1日4000kcalくらい食ってる。いろいろあって、体重は15年前より20kgくらい重い。

ところがこれは自覚的な話にとどまらなかった。もちろん体重や中性脂肪、LDLコレステロールといった指標にも現れてるんだけど、血糖値の指標によって、生活の様子がさらにあらわにされていることがわかった。

空腹時血糖値が縦軸、HbA1cが横軸

つまり、現在のインスリンの働きを示す空腹時血糖値が113(正常値100まで、正常高値110まで)、直近1〜2ヶ月の血糖値状態を示すHbA1cが6.0(正常値5.6まで、正常高値6.0まで)というのは、インシュリンの分泌が常時続いているためランゲルハンス島が疲労した状態が慢性化してる、ということだというのだ。こいつが完全にギブアップしたら糖尿病である。

そんなわけで体重を3ヶ月で5キロ減らす目標を立てた。本当はリバウンドしないためには月に体重の1%以内の減量に抑えるべきとのことなんだが、どうせ最初のうちはどんどん落ちるし飽きる前に落としたいので、5kgに設定させてもらった。

これをどのようにアクションに落とし込むかと言うと、カロリーの値を使う。

5kg = 7000kcal/kg * 5kg = 35000kcal

なので、これを3ヶ月で割って12000kcal弱。さらに30で割って、1日の目標値は400kcalの削減となった。

アクションプランは現在の生活への差分として宣言する。まずは夕飯の飯を200g(大きい茶碗)くらいは食ってるのを150g(ふつうの茶碗)にすることを宣言。これで減らせるのが…えっ、80kcalですか?

あと320kcalどうしよう。こまごま変えるのはたぶん忘れる。でもあまりドラスティックなことをやるとスリップしそう(オレの意思の弱さと飽きっぽさを舐めんなよ)。

もうこういうときは、これまでに時々やってることをやるのがいいな、と思ったので、昼食をプロテインに置き換える宣言をした。

アクションプラン

これで400kcalの削減…もはや目標オーバーしてますなw でもまあ実行が楽なんでこれで行きましょうということにした。プロテインと大量の水を飲むとその後あまりお腹が空かないんだよね。食欲の7割は水分が欲しいだけ、残りの3割のうち8割くらいはタンパク質が欲しいだけって感じがある。

他の宣言は無し。間食とか飲酒についてもちゃんと白状してるんだけど、これらについてアクションなしw

そんで昨日今日と実行してみたんだけど、両日ともブランチでだいたいお腹を満たし、小腹がすいたとこでプロテインを飲んだ。夜はご飯ではなくパンの日なので、通常2〜3枚食うところを1枚でサンドイッチを作って食ったのみ。

いまんとこ、ぜーんぜん平気。

昨日の夕飯は「パン1枚に挟もう、だったら肉がいいな」と思って豚ロースの塊から厚めに切ったやつを…気がついたらトンカツになってました!! カツサンドうまい!!!!

今日の夕飯も豚肉を切り出して、今度はニョクマムとタイ醤油(濃い口)と砂糖と唐辛子で漬け込んでグリルで焼いた。大根と人参とキャベツを刻んで甘酢に漬けて、パンに挟んでバインミー

パンが1枚になったらヒモジイかもと想像してたんだけど、いまんとこ案外なんともない。ていうか、口さみしければ平気でアイスとか食ってる(間食については宣言してないのだw)。昼飯に頭を使わんでよいのもよい。どうしても食いたきゃオヤツ扱いで食えばいいやと思っているw

本当にこんなんで良いかどうかは体重の動向を見るしかないけど、カロリーは確かに減ってるから理屈では痩せるはず。人体実験っすな〜。

最初の報告は10日後に生活記録票を郵送すること。

…10日で何か変わるのだろうかw