多重CFの統一場理論


ABSTRACT: Ingressの究極的なゲーム目的はMUの獲得である。時間あたりの獲得MUを最大にする方法のひとつである多重CFは、計画に手間がかかるため簡便なノウハウが発達してきたが、これらは手法が固定されているためにキーや移動距離といった資源状況の変化に対応しにくく、柔軟な一般則が求められてきた。この一般則が著者により発見された。「想定CFの3頂点のすべてにリンクができるように4頂点目を設定する」である。



IngressGoogle社内ベンチャー、Niantec Lab.がリリースしたゲームです。プレイヤーは青と緑、2つの陣営のどちらかに属します。青はResistance反抗期、緑はEnlightened意識高い系です。
ゲームの目的は、自陣の「コントロールフィールド(支配地域/CF)」の中に出来るだけたくさんの人を囲い込み、自陣の色のエネルギーを浴びせて洗脳することです。


コントロールフィールド(以下CF)は3つのポータル(頂点)の間をリンクする(線を引く)ことで三角形を作ると発生します。画面上では地図が青や緑の三角形に染まります。囲い込んだ人数は「マインドユニット(心単位/MU)」という指標でカウントされ、時間ごとに集計されて陣営単位の勝ち負けが出ます。



CFの外側にCFを作れば、MUが重ねてカウントされるのでお得です。たぶん洗脳度が累積するという話なんでしょう。これをプレイヤーは「多重CF」と呼んでます。重なった部分は色が濃くなります。



CF同士は頂点や辺を共有することができるので、移動の手間や、リンクに必要な「ポータルキー」を節約することができます。二重にお得ということです。


「多重CF」という言葉は本来、CF同士が含有関係にあるすべての場合を指すものです。しかし、いま取り上げたいテーマは、内側のCFと外側のCFを100%重ねることを目標としたプレイについてです。こうした多重CFを「狭義の多重CF」と呼ぶことにしましょう。


重ねあわせ面積を100%にすることは、2つの三角形を重ねるだけではできません。



底辺を共有した三角形ABCとDBCを考えてください。この二つの三角形の間には、1つの角が凹んだ四辺形ABDCが形成されます。狭義の多重CFは、この四辺形をAD間にもう一本の線を引くことで分割し、三角形ABDおよびACDを作ることにより形成します。



多重CFの作り方については、なんともいえないモヤモヤを抱えたままの人が多いと思います。どのポータル同士をどんな順序で繋ぐべきか判りにくく、ポータル間距離やポータルキーの数が偏るとさらに条件が複雑になるからです。バラバラに散らばった沢山のポータル同士をやみくもにリンクしても、というか、地図を印刷して慎重に計画した上でリンクしていったとしても、それが最適な形になっているのかについては確信を持ちにくいものです。


このため、プレイヤーの間では「タケノコ多重(底辺を共有して上に向かって大きくする)」や「螺旋多重(底辺を常に変えながら大きくする)」といったアドホックなノウハウが発達してきましたが、これらは手順であって論理ではありません。手順だけを覚えても、移動距離やポータルキー数の偏りに対応した最適な資源投入はできないのです。


上の一般則はそれらを含有し、置き換えるものです。



IngressのCFには次の定義/ルールがあります:

  • CFとは3頂点を結んだ三角形である(四角形以上はCFにならない)。
  • 一辺のリンクで複数のCFが形成されうるときは最大のものだけが形成される。
  • ただし四辺形を切断するときだけは2つのCFを同時に作ることができる。

このため、面積を100%共有した二重のCFを得る唯一の手順は:

  1. 小さい三角形を作る
  2. これと1辺(2頂点)を共有する大きな三角形を作る
  3. 共有しなかった頂点同士を結ぶことにより四辺形を切断し、2つの小さな三角形を作る

となります(CFは手順ごとに1+1+2個の合計4個出来ます)。



形成条件は:

  • 1辺を共有した2つの三角形が内包関係にあること

のみです。
辺を共有できなかったり、三角形同士が内包関係にない(頂点が飛び出すので片方のCFしか作れない)場合はCFが100%重ならず、狭義の多重CFを作ることができません。逆にこの条件を満たす4ポータルであれば、必ず狭義の多重CFを作れます。条件を満たさない4つのポータルに対しては、即座に形成不能と判定できます。


また、狭義の多重CFは

  • 常に2つの三角形の間の関係であり、
  • 2つの三角形の間で完結します。

狭義の多重CFは4つのポータルのみで形成され、その完成形は3つの頂点を露出した通常の三角形です。要素はこれだけであり、他にたくさんのポータルがあったとしても除外して考えることができます。


画面で見ていると、目の前のリンク可能ポータルには全部飛びつきたくなりますが、まずは小さくて他から独立したCFを想定しましょう。上の図で言えば三角形DBCです。


この想定CFに対して、外側の三角形だけの頂点となる4つ目の点Aを考えます。Aは辺DB, DC, BCに邪魔されずにすべての頂点にリンクできる点を選びます。



このように選んでも狭義の多重が作れます。



しかし、想定CFのすべての頂点にリンクできない点を選ぶと多重は作れません。



さらに実地に近い形で見て行きましょう。


  1. 最初に意識する4つのポータルは、2番目の図の薄青の三角形と5番目の図の濃い青の三角形を成す4頂点です。
  2. しかし大きな方の三角形を作るとCF内に沈んでしまうポータルがあるので、近傍の4頂点でもうひとつの多重を作ります。
  3. すべて繋いだ後で、次の多重で沈むであろう右上のポータルで小さいCFを作ります。


CF数は4+3+1の8です。6個のポータルがすべて狭義の多重CFを形成すると(n-3)*3+1=10で10CFできますが、外に出てしまうCFが1つあるので、5ポータル時の最大である7CF+1CFです。4つのポータルを意識することで、常に最多のCFを形成することができます。


ある多重CFに入れられないポータルも、その多重の外側にもう一つの多重を形成する可能性があります。ただしこちらを慌てて繋いでしまうと、次の段階の多重を容易に邪魔します(よくある失敗)。


ここでも4つのポータルを意識します。邪魔になっていたポータルが次のCFに沈む直前には、これを沈めるCFの3つのポータルを含めて4つのポータルが内包関係を作ります。それぞれを繋いでやると、ポータルは邪魔にならずに新たな多重CFを形成します。


狭義の多重CFは、常に4つのポータルの関係だけで形成できるので、繋ぐ順序を変えることもできます。結果は同じになります。


これも同じ結果になります。


関係性が成り立っていれば、別のポータルを繋いでも形成できるCFの数は同じです。


キーの数が偏っていた場合、外側のCFの一部を先に繋いでおくのは有効な手段です。ただし5つ以上のポータルでCFを作ってしまうと、手順違いになって形成できないCFが出ます。


大三角の右上の部分は2重にはカウントされていないので、7CFしか作れませんでした。


実際のプレイでは、CF内に沈んだポータルからはリンクを張ることはできないというルールがあるため、狭義の多重CFを作る最後の四辺形切断は外側の4頂点目(頂点A)からリンクする必要があります。


小さいCFから始めて大きく育て、最終的には既存のリンクやCFと接触するので、いちばん外側のCFの型を考えておきましょう。



それでは最初に書いた一般則を繰り返します。もう意味がわかると思います:

想定CFの3頂点のすべてにリンクができるように4頂点目を設定する


これまで実地のノウハウとして、「クソリンクは底辺」「長辺は底辺」「近くは最後に繋げ」などを考えてきましたが、いまいち一般性が低い(例外が多い)ので人には言ってませんでした。しかしこれは例外がありません。


必要なのはこれだけです。